はやみねかおる先生の人気シリーズ『怪盗クイーン』。2025年6月発売の最新刊『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』では、ついに謎に包まれたクイーンの過去が紐解かれる驚きの展開に。今回は、『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』のネタバレ感想と考察をざっとまとめました。
【ネタバレ注意】『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』感想と考察
クイーン不在時のジョーカー&RDが尊い

インドで皇帝とともに生き埋めになり、それ以来数か月ものあいだ行方不明となっていたクイーン。
……の不在時に「クイーンを忘れないためにクイーンのふりをして」怪盗として仕事をしていたジョーカーくんとRD。このあたりの流れや描写がいかにもツンデレな彼ららしくて大好きです。愛ですね、愛。
実際問題、ジョーカーくんの人生において、物心ついてからこのかた「まともに向き合ってくれた大人」ってクイーンが初めてだと思うんですよね。シスのことは記憶にないだろうし、収容所の教官たちはいわずもがな。
そのクイーンが物理的に”いなく”なり、さらには記憶すらもどんどん消えゆく……という状況になったら、まあそりゃ不安定にもなるよね。つくづくRDが居てくれてよかったなと思った回でした。どうでもいいが、ティグルに扮したRDを気遣うジョーカーくんが優しすぎてメロすぎた。
巧之介さんとゐつさん夫婦×ムーブル(クイーン)
そして、発売前からさんざん話題となっていたクイーンの過去について。
「ムーブル」って呼ばれてたのね、うんうん。。名付け親は怪盗九印ことゐつさん。名づけの理由はさておき、クイーンが真っ当な両親のもとできちんと愛情を注がれて育ったという事実にまず驚きました。
とにかく巧之介さんとゐつさん夫妻が素敵だった。そして、一般的には「普通の人間」ではないクイーンが、曲がりなりにもリトルジョーカーくんの親代わりとして、彼の素直で優しい性質を歪めずにまっすぐ育て上げることができた理由が初めてわかった気がしました。
例えばクイーンを引き取ったのが巧ゐつ夫妻ではなく、愛情のない、義務感だけの人たちだったとしたら、クイーンは下手したら怪盗どころじゃなく、完全に心が乾ききった極悪人になっていてもおかしくなかったんじゃないのかな。ウァドエバーみたいな(名前だしてごめんw)。幼少期の行動や言動をみるに、その素質は十二分にあったと思うのです。
「普通」の枠から大きく外れていたムーブル(幼少クイーン)
何はともあれ、陽炎村でほかの子どもたちと同じように暮らすことになったクイーン(ムーブル)。(面倒なので、以下クイーンと記載)。
しかし、クイーンは幼少時からたしかにクイーンでした。善人でも悪人でも正義の味方でもない、そして本質的にいろいろな意味で「普通」から完全に外れた存在。ほかの子どもが本能的に感じるような恐怖心も倫理観も、クイーンにはかけらほどもない。
しかしながら、意外にも「普通」ではないことに苦しむ描写はありましたね。
「普通に暮らしたい、でも普通ではいられない」。現実世界においても、これを自覚している子どもがどれだけ苦しいか、どれだけ心細いか。
だからこそ、巧之介さんとゐつさんの懐の深さが心に沁みました。ふつうなら、どこの誰だかわからない養い子が夜な夜な外をほっつき歩いていたらもっと「引く」と思うんです。しかも現在の感覚じゃなく、まだまだ亡霊とか魔女とか呪いとか、そういう人ならざるものの存在を本気で信じて忌む人たちが多かった時代ですから。
クイーンの年齢・性別・国籍はいまだ不明のまま
そして、地味に気になったのがクイーンの性別に関する描写です。ゐつさんがあえて明言せず、巧之介さんに対してさえも言葉を濁したということは、つまりはどういうことなのか。
もっとも、このあたりは読者サイドが想像で補うしかないのでしょう。
以前からひそかに気になっていたことですが、少なくとも、同じく赤い夢の住人である教授や皇帝に関しては「男性」として「綺麗な女性」に興味があるという描写がわりとなされているんですよね。しかしながら、クイーンに関してはそうした「魅力的な異性」に興味関心を持つという描写が一切ありません。
このあたりの解釈は人それぞれかと思いますが、個人的には、クイーンはやはり明確に「男」でも「女」でもない存在で間違いないだろうと思っています。いわゆる「両性具有」と呼ばれる存在ですね。
皇帝×クイーン、脅威の6000年ループの行く末ははたして…
そしてラスト。ようやく明かされた皇帝(アンプルール)の真実、いろいろヤバすぎて心が震えました。え、6000年ループ……。何周しているものかわかりませんから、実質6000年×n歳ということに。と、とんでもねえ。。彼のモチベーションはクイーン(ムーブル)への愛なのか何なのか。
皇帝の発言に関してはところどころ『悪魔の錬金術師』やファンブックでの説明と矛盾しているようにも感じましたが、まあそのへんはスリップの一言で全部説明がつくのでしょう。そもそもはやみね世界全般が無数のパラレルワールドの共存により成り立っていますから。
ところで、ヤウズくんは今どうしているんだろうね。時の流れを考えると、皇帝が6000年前のエジプトに行ってしまった後、ヤウズくんはそのままひとりになるという展開が妥当かと思うのですが。なんだかんだ皇帝に懐いていたもんなあ。。あのままお別れとかさすがに悲しすぎる。
シリーズ最強かつ最恐! と謡われてきた皇帝が、その実、時空の歪みに囚われて延々とさまようという地獄に棲んでいる。そして、その事実をようやく知ったクイーン。皇帝を助ける鍵はやはりアムリタなのか、それとも……。
次回の舞台はイタリア。とりあえずアムリタとはつまるところ何なのか、そろそろ教えてくれよおおお……! あとカレーは結局作らないのかい?w 続く展開にも注目です。
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