白泉社が発行する漫画雑誌【花とゆめ】にて連載中の少女漫画『暁のヨナ』。
アニメ化や舞台化、さらにはヨナカフェなどさまざまな関連イベントも開催されており、メディアミックス作品としても注目を集めています。
今回は漫画【暁のヨナ】のメインキャラの2人、ハクとスウォンの関係性について。
ハクとスウォンのあいだに正しい友情はあったのか?
なぜかやたらと懐疑的なタイトルになってしまいましたが、別に他意はありません。ただ今回は本編あらすじとは別に、メインキャラであるハクとスウォンの関係性についてとことん語ってみたいなと思います。
まず『暁のヨナ』という作品について、ストーリーの中心に存在しているのはヒロイン・ヨナ姫であることは間違いありません。が、ストーリー展開そのものの軸になっているのはどちらかといえば彼女ではなく、ハクとスウォン、むしろこの2人のほうではないかと思うんですよね。
そもそもスウォンがヨナの父・イル王を弑逆しなければ本作のストーリーは始まりません。そして、箱入り娘だったヨナの行き先・在り方を決めているのは、少なくとも初期の頃はハクの役目だったといっていいはず。
このように、ある意味では主役のヨナ姫以上に重要キャラといっていい2人ですが、では互いの存在をどのように認識していたのか? という点になるととたんに語るのが難しくなる気がします。
作中では案外、そういうデリケートな部分についてはあらゆる場面で語られているようでいて、肝心な部分についてはずっとぼかされているような気がするんですね。
ハクとスウォンはヨナ姫を含め、表向きは3人で仲良し幼なじみだったわけですが、しかしスウォンは父・ユホンの死とともにヨナのことを単なる幼なじみ、従妹として見ることはできなくなっていたでしょう。
もちろんヨナ自身には何の罪もないとはいえ、仇であるイルの娘であるという点はもはやゆるがないため、彼女に対し純粋な好意や親しみを感じることはもはやできなくなっていたのではないかと推測できます。
一方のハクは、これまた早い段階でヨナに恋情を抱いていたはず。これは作中においても、比較的はっきりと描写されていますね。
「あいつみたいになれたら」的な憧れの念が強すぎたのでは
では、肝心のスウォンのハク2人の関係性はというと、これがまたなかなか複雑なんですよね。一見、友情っぽい感情がありながらも、実際は単なる友情以上の感情を互いに抱いていたのではないでしょうか(というとブロマンスかはたまたBLかという話になってしまうが決してそこまで言いたいわけではない)。
一言であらわすなら、2人のあいだにあったのは友情ではなく、”憧れ”に他なりません。「あいつみたいになれたら」的な確固たる憧憬の念が互いに強かったからこそ、逆に互いに全く見えていない部分もあったはず。
ハクは基本的に裏表のない男ですが、それでも人を疑う心は人並みにもっていたはずです。武人である以上、ある程度は他人の機微にするどくもあったでしょうし、実の親に育てられていないという生い立ちもあり、人並み以上の懐疑心は持ち合わせていたでしょう。
そんなハクですが、あれだけ近くにいたスウォンを疑ったことだけは一度もなかった。イル王暗殺のあの日まで、ハクの中にあったスウォンへの想いはもはや偶像崇拝といっても良いほど盲目的なものだったんじゃないかなあと思います。
ヨナはいまだにハクとスウォンをつなぎ続けている
上記でも否定しましたが、実のところハクとスウォンの関係性はブロマンスラバーが喜ぶ類のものとはほど遠いはずです。ハク視点で語るなら、スウォンの謀反は小さい頃からずっと大切にしてきた聖域を汚された的なショックに等しいものだったのかなと。
互いの存在を失い、それでもその縁が切れていないのは、2人のあいだにヨナ姫がいるからに他なりません。
理由はただ一つ、ヨナだけはいまだにハクとスウォンが並び立つことをどこかで諦めていないから。ハクとスウォンが遠い昔に捨ててきた夢を、ヨナだけはまだかろうじて抱きつづけている。だからこそ、一度は追われた身でありながら城へ戻り、あくまで”王家の人間”としてのふるまいを続けてきたわけです。
四龍とユンはヨナにとってもちろん大切な存在ではありますが、それでもハクとスウォンとはまた違う枠だと言えると思います。ヨナの人生はイル王の死とともに一度終わっていて、人生はそれまでとそれからの2つにはっきりと分かれているわけで。
彼女がハクとスウォンのあいだに立ちつづけるのは、ある意味で一度こわれてしまった自分自身の人生を一つにつなぎとめる意味合いでもあるのかもしれません。
スウォンは”それまで”の人生において一番大切だった人、そしてハクは、”それから”の人生において一番大切になった人。
ハクとスウォン、そしてヨナ、この3人の関係性はもはや単なる幼なじみとはほど遠いのに、作中でそこに触れている描写は実は片手で数えるほどしかありません。この絶妙な魅せ方が土台にあるからこそ、40巻を超えてもなお、作品としての新鮮さがたっぷり感じられるのかなあと思います。各々の今後の心情描写にも注目ですね。