『白夜行』雪穂はひどい?亮司はかわいそう?【ネタバレ感想と考察】

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エンタメ

東野圭吾さんの『白夜行』は「トラウマ級」と称されることが多い衝撃作。物語のテーマが非常に重い上、展開一つひとつをみても特に救いもないパターンが多いんですよね。

今回は、メインキャラクターである雪穂と亮司の台詞や行動に焦点を当てて、気になるところのみ考察していきたいと思います。

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【ネタバレあり】『白夜行』の雪穂はひどい?亮司はかわいそう?

雪穂は”サイコパス”なのか?

東野作品全体をみても、『白夜行』のヒロイン・雪穂ほどサイコパスみあふれるキャラクターはなかなかいないと思います。

ただ、そのへんの認識は、原作小説を先に読むか、あるいは綾瀬はるか×山田孝之のドラマ版を先にみているかにとってかなり変わってくるんじゃないかなと思うんですよね。

一般的に、サイコパスには以下のような特徴があるとされています。

  1. 共感性の欠如:他人の感情や痛みに対して無関心。
  2. 自己中心的な性格:他人を利用してでも自分の目的を達成しようとする。
  3. 罪悪感や良心の欠如:自分の行動が他人にどれだけ害を与えても、良心の呵責を感じない。
  4. 巧妙な嘘つき:魅力的でカリスマ性がありながら、巧みに他人を騙す。

うん、ほぼ雪穂やん! 特に原作小説に登場する雪穂の行動・言動の多くは、まさに上記の特徴をもれなく満たしているように思います。

ドラマ版だと……どうかな。ドラマ版はエンタメ作品として脚色されている部分も多々あり、さらに演じている綾瀬さんのやわらかい雰囲気も相まって、雪穂というキャラクターの印象そのものが原作とかなり差があるのも事実。 

とはいえ、個人的にはドラマ版のほうの雪穂も、徹底して作りこまれた人物像が魅力の、とことん見ごたえのあるキャラクターだと思っています。

原作の冷酷な雰囲気とはまた違い、どちらかといえば”悲劇のヒロイン”感を強めた感じなのかなあ。原作とちょっとずれた独自ワールドに生きる空気感が素敵でした。

松浦を刺した亮司「誰にも言わなかったじゃん、あのことだけは」

そんな雪穂をけなげにも影で支え続けた男・亮司について。彼は幼少の頃に実の父親を刺し殺していますが、もちろんそれは雪穂を守るために他なりません。

しかし、その事実を握ったうえで、亮司をひそかに脅し続けてきた人物がいました。そう、渡部篤郎さん演じる松浦という男ですね。

亮司と松浦の関係性は、ものすごく歪んだ、奇妙なものだったように思います。単に脅し脅されの関係じゃなく、あるときは兄と弟のような、あるときは父と息子のような。

松浦自身も寂しい人間だったからかなあ。亮司を抑えつけながらも時には面倒を見たりやさしくしたりすることで、ぽっかり空いた何かを埋めていたようなところがあるんじゃないかと思うのです。

しかし、最終的には父親と同じように、松浦も刺してしまった亮司。もちろん、動機は「雪穂を守るため」。

亮司にころされると理解した瞬間の松浦の台詞は衝撃的でした。「誰にも言わなかったじゃん、あのことだけは」。

「あのこと」、つまり亮司が人殺しであるということ。

亮司と松浦の縁は、この事実さえなければとうの昔に切れていたでしょう。それをはっきり理解していた松浦。ある意味では、亮司に対し一番強く情を抱いていたのは彼なのかもしれません。

典子に対する亮司の言葉「手が小さい」の意味は?

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雪穂を影で支えつつも、他の女性・典子とも関係を持っていた亮司。

もっとも、薬剤師である彼女に近づいた理由は毒性のある薬品を手に入れるためだったようですが、少なくともドラマ版では、彼女に対してもある程度の情はあったんじゃないかと思います。

そんな典子に対し亮司がふと口にした言葉「典子は手が小さい」

意味深なんですよね。複数の解釈ができる。単に典子の手が小さいというだけでなく、ほかの誰かと比較しているのは確実だと思われます。

では、比較対象は誰なのか? 白夜行ファンのあいだでは、雪穂か、あるいは亮司自身の父親であるという説が濃厚です。

前者ならわかりやすいですが、もし後者なら、亮司自身も父親から何かしらの被害を受けていたことになってしまうんですよね。だとしたら、彼が父親を刺し殺した動機は、単に雪穂を守るためだけではなかったのかもしれません。

雪穂は妊娠できない身体なのか?

亮司の協力のもとに見事結婚までしていた雪穂。もっともその動機はお金だけだったようですが、少なくとも表面上は、亮司よりも一般社会に紛れ込むことができていたように思います。

が、当然ながら過去の傷が消えたわけはなく。婦人科系の持病があるわけではないのに「妊娠できない」「子供が生めない」身体になっていることは、劇中で雪穂自身が明言しています。

それをあえて亮司に告げたのは、単に本音を打ち明けられる相手が彼だけだったからなのか、はたまた亮司に罪の意識をより濃く植え付けるためなのか……。見方によって行動の意味が変わってくるのもまた、本作の面白いところなのではないでしょうか。

『白夜行』ドラマ版と原作の違いの考察はこちら

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