津田雅美の代表作『彼氏彼女の事情』通称「カレカノ」。庵野秀明監督によりアニメ化もされており、メディアミックス作品としても広く知られています。今回はカレカノの登場人物であり、メインキャラクター雪野や有馬と深く関わった人物・井沢真秀(まほさん)について。
カレカノのヒロイン雪野と真秀(まほさん)の関係性について
まず重要なのは、本作のヒロイン雪野と真秀の関係性について。出会った当初は単にクラスメイトであるというだけの関係でしたね。
ただ、カレカノメンバーの中で、ヒロイン・雪野に対し誰より強い執着心を抱いていたのは、実はメインヒーロー有馬くんではなく真秀のほうだったといえるのかもしれません。
完璧な外見と成績を保つことだけに全力を尽くしていた雪野は、ある意味では”周囲が見えていない人”だったといっていいでしょう。空気が読めないという意味ではなく、そもそも読もうとすらしていなかった。
有馬に出会うまでは、自分以外の人間に対し”興味がなかった”わけですから、当然といえば当然でしょう。そして、雪野のそうした部分を初めて見抜いたのが他でもない真秀でした。
「だから”それ”に気づいたのはわたしだけだと思う あれは演技だ」
『彼氏彼女の事情』真秀モノローグより
気づいただけではなくそこにしっかりつけ込んだのもまた、真秀のすごいところ。周囲をまともに見ていなかった雪野とちがい、彼女は誰より周囲の空気(というより集団女子の深層心理?)に敏感でした。
しかし自分自身を良く見せるためだけにすべてを偽っている人間なんて「避けるべき地雷」以外のナニモノでもないのに、避けるどころか自ら突っこんでいくあたり、真秀自身もまたなかなかのクセモノといっていいのかもしれません。
カレカノメンバー真秀(まほさん)のキャラクター性と名言
『彼氏彼女の事情』という作品の根底には「自己認識」や「他者との関係性」といったなかなかに重いテーマがひそんでいます。
作中に登場する恋愛や友情、青春、その他すべてのエピソードがそうしたテーマに結びついているわけですが、カレカノ登場人物においていちばん「恋愛」について深く語っているのもまた、実はヒロイン雪野ではなく真秀なのかもしれません。
心のバランスが崩れるほどのひとに会った だから「心を奪われる」っていうの
『彼氏彼女の事情』真秀モノローグより
傷つくのが恐いのは相手より自分の心を大事にしてるからだって わたし好きになるってその逆のことかもしれないって思うんだよ
上記の真秀のセリフは、有馬のことで思い悩んでいる雪野に対するものでしたが、これらの言葉に雪野は実際、かなり救われたんじゃないかなと思うんですね。
本作の最終章にて、どっぷりと闇落ちしヤンデレ化してしまった有馬くんをまるで聖母のごとく救い上げてみせた雪野ですが、なんだかんだで浅葉や真秀らカレカノメンバーの力がなければ難しい部分も多かったはず。
雪野のもっていた”恋愛”という概念をことごとくアップデートしてくれたのは、実は真秀なんじゃないのかな。ある意味、真秀というキャラクターは『彼氏彼女の事情』の作品テーマを誰より体現していたといえるのかもしれませんね。
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