白泉社が発行する漫画雑誌【花とゆめ】にて連載中の少女漫画【暁のヨナ】。
アニメ化や舞台化、さらにはヨナカフェなどさまざまな関連イベントも開催されており、メディアミックス作品としても注目を集めています。
今回は漫画【暁のヨナ】の243話(42巻収録)「別れを告げる夜」のネタバレ感想と考察について。
『暁のヨナ』243話(最新42話)「別れを告げる夜」のネタバレ感想・考察
この記事では本編あらすじの詳細な文章化はしておりません。
ネタバレ要素はありますのでご注意ください。
メインヒーロー・ハクが盟友スウォンを明確に”諦めた”瞬間
この先もずっと 肩を並べて歩けるように…
『暁のヨナ』42巻
だがもう忘れる もう…思い出すこともない
243話にて個人的に印象的だったのは上記のハクのモノローグ。<だがもう忘れる もう…思い出すこともない>。
このモノローグは243話のラストのコマにひっそりと登場します。そもそも243話の本編そのものがハクにとって衝撃の連続だったはず(スウォン、それからゼノを除く三龍の短命を知る)なので、まあ流れとして不自然な台詞というわけではないでしょう。
が、個人的にはここ、読みながら結構びっくりしてしまったんですよね。そうか、”肩を並べて歩けるように”という幼い日のあの誓いはまだ完全にはハクの中で消えておらず、小さくくすぶったままだったんだなあ、と。
私個人はいわゆるBLの世界に全く興味がないのですが、『暁のヨナ』という作品の全貌をみていると、いやこれ結構”攻めた”作品といっていいんじゃないかという気がしています。
これはもちろん変な意味ではありません。『暁のヨナ』はまぎれもなく”ザ・少女漫画”であり、その名の通り少女・ヨナの人生を大きく描き出す作品となっています。
ただ、いち漫画ファンとしては、あくまで”少女漫画”にカテゴライズされる作品において、二人の男性間の思い・感情をこれほどじっくり描き出す作品は実はかなりレアなんじゃないかと思ってしまうんですね。
『暁のヨナ』のザ・メインキャラクターは間違いなく、ヒロイン・ヨナとその幼なじみであるハク・スウォンの三名でしょう。そして”少女漫画”なのですから、ヨナとハク、はたまたヨナとスウォン、この二組のあいだに生じる愛憎の念を丁寧に描く、というのが筋であるはず。
しかし『暁のヨナ』の昨今の展開をみていると、ヨナとハク、そしてヨナとスウォン、この二組についてはあらかた”描き終わって”しまっているんじゃないかという気がしてなりません。
メインカップルであるハクとヨナについてはわりと早い段階で想いが通じているわけですし、そして同じく早い段階で、ヨナはスウォンのしたことの意味を理解していたと思います。
それは決して父親をころされたことを許したという意味ではなく、ただ城を追われ高華国じゅうを見てきた上で「あ、この国の現状けっこうやばいな」と肌で感じられたのだろうと思うので。
実際に、スウォンの目的が権力を手にし悪政を働くことではない…ということさえわかれば、あとはせめて今の自分にできることをしよう…というのが初期のヨナ姫のスタンスだったはず。
メインヒーロー・ハクと現王スウォンの関係性
男女間の切実な恋情が描かれた漫画作品には、多くの漫画ファンが心動かされることと思います。が、それが少女漫画において描かれる男性間の執着や憧憬の念であればどうでしょうか。
この漫画でまだはっきりと描かれきっていないのはメインヒーロー・ハクと現王スウォンの関係性なんじゃないのかと思えてなりません。友情、憎しみ、自責の念、憧れ、正直なところどれもしっくりこないんですよね。
それはまさにこの243話まで、ハクがスウォンのことを”諦めきれて”いなかったからに他ならないんじゃないかと思います。
幼い時分からその背を追い続けたわけですから無理はありませんが、それでも<肩を並べて歩く>という願いをいまだに彼が抱えていたことについては個人的に結構な衝撃でした。そうか~、そこ引きずってるならそりゃまあ苦しいよなあ、とも。
しかしこの段階でその願いをようやく手放せたのであれば、あとはかなりスムーズになります。なぜなら今まで一人で色々と抱え続けてきたハクが、ようやく目の前に立ちはだかる四龍についての問題に集中できる状態になるからです。漫画ファンとして、そしてヨナファンとして、ここからのストーリー展開にはさらに注目したいところですね。