映画【キリエのうた】のあらすじとネタバレ | アイナジエンド(キリエ)の歌唱が最高だった

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キリエのうた エンタメ

映画【キリエのうた】は、【スワロウテイル】や【リリイシュシュのすべて】などで知られる岩井俊二監督の最新作。出演者は主演のアイナジエンドの他、広瀬すず、松村北斗(SixTONES)、黒木華など。

今回は映画【キリエのうた】のあらすじとネタバレ感想、注目シーンなどについて

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映画【キリエのうた】あらすじ・ネタバレ感想

※ふわっとしたネタバレあります。

岩井俊二監督の独特の空気感が昔と変わらずスクリーン上に広がっていた

まずは岩井俊二監督作品の大ファンとして。

本作【キリエのうた】の内容や全体的な雰囲気は、若い俳優さんが多く出演していることもあり、過去作【リリイシュシュのすべて】や【スワロウテイル】などと結構近い感じもあったように思う。
また、広瀬すずさんや黒木華さんが出演しているためか、【ラストレター】や【リップヴァンウィンクルの花嫁】などのあの独特の穏やかな空気感も思い出した。

これまで制作し発信してきたものと同じ世界観・空気感が最新作のなかにも変わらず広がっていたことが、岩井俊二監督作品のファンとしてはものすごく嬉しかった。

一つの空気感や雰囲気を何年間も、何十年も大事に守っていくということは、並大抵のことではないと思う。
なぜなら、時代によって”ウケる”世界観は変わるから。令和のこの時代は、濃厚な人間ドラマよりは、非日常を追求したアニメーション作品のほうが若者の層には受けやすい。

もちろん、知名度や人気を獲得するために自分の表現をどんどん変えていくのも一つの力だし、必要なことだと思う。しかし昔と同じテイストを保っていくのも、実はそれに匹敵するくらい”大変”だし、スゴイことなんじゃないだろうか。

今回の【キリエのうた】を観て、ああやっぱり岩井俊二監督作品はコレだよね~!と思えたのが嬉しかった映画ファンは、結構多かったんじゃないかと思うのだ。

主演・アイナジエンド(キリエ役)について

本作の主演を務めたのは元BiSHのアイナジエンド。独特のハスキーボイスが特徴で、アイドル時代からその歌声が一際注目を集めていた。

このハスキーで独特な声色は、【スワロウテイル】のCharaや【リリイシュシュのすべて】のSalyuのそれと結構近いものがある。
アイナジエンドが本作の主演に選ばれたのもこの声質が理由だろう…とキャスト発表を初めてみたときから私は思っていたし、他にもそう感じた人は多いんじゃないかなと思う。

しかし【キリエのうた】本編をみると、ああやっぱり「声」だけじゃないんだなと思わされた。もちろん音楽映画なのだから「声」「音」がピックアップされているのはたしかなのだけれど、正直それ以上に強く伝わってくるものがあったのだ。

若者特有の焦り、痛み、自意識と他者意識。
普通にやっていきたいのに運命に邪魔されてぐちゃぐちゃになってしまうやるせなさ。

苦しくてどうしようもなくて、絶望の先にあったのがキリエ(アイナジエンド)にとって【歌】に他ならなかったのだろう。この感じは、実際に音楽に救われてきたアイナだからこそあんなふうに表現できたのだと思うし、だからこその”ハマり役”だったのではないだろうか。

イッコ(広瀬すず)・夏彦(松村北斗(SixTONES))・黒木華(フミ)

私は本作公開前に発売されていた原作小説のほうはチェックしていなかったので、【キリエのうた】のストーリーが東日本大震災に絡んでいるとは知らなかった。

震災という深刻なテーマが物語の根幹にあり、さらに主人公・キリエ(アイナジエンド)が歌うことでしか「声」を出せないという設定がある。

だからこそ本来ならばもっと”シリアスな”空気感になってもおかしくないはずなのに、暗い要素だけじゃなくにぎやかな”群像劇”としても成立していたのは、やっぱりイッコ(広瀬すず)、夏彦(松村北斗)、フミ(黒木華)の3人のキャラクターや、役者さんそれぞれの雰囲気あってのものだったんだろうなと思う。

全員が何かの形で主人公のキリエと関わっていて、無駄なエピソードや冗長な部分なんて一つもないのがすばらしかった。

岩井俊二監督の【ラストレター】では、時代と逆行して「手紙」をきっかけに関係性ができていく、人がつながっていくアナログ感がとても好きだったのだけど、本作【キリエのうた】でもなぜか、それに似た要素を感じた。
誰かが誰かを想っていて、その想いが時間をかけてようやくつながっていく、というもどかしい感じがストーリー上に常にあったからだろうか。

中でも夏彦(松村北斗)がキリエ(アイナジエンド)と再会し泣きながら謝罪するところに引き込まれた。誰か一人を探して探して、やっと巡り合えたこのラストは、主題歌【キリエ憐れみの讃歌】のラストの歌詞【何度でも何度だっていく すべてが重なっていくために】と重なる。

登場人物一人一人の個性が一切の無駄なく表現された、とても印象深い作品でした。

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*記事内画像出典:映画【キリエのうた】公式サイト

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