白泉社が発行する漫画雑誌【花とゆめ】にて連載中の少女漫画【暁のヨナ】。アニメ化や舞台化、さらにはヨナカフェなどさまざまな関連イベントも開催されており、メディアミックス作品としても注目を集めています。
今回は漫画【暁のヨナ】のキーパーソン・四龍が短命である件、そしてこの先の展開はどうなっていくのかについてあらためて考えてみました。
『暁のヨナ』42巻ネタバレ感想と考察 四龍が短命である意味は?
『暁のヨナ』という作品において、ヒロインであるヨナ姫が城を追われ、そしてまた城に舞い戻り…という一連の本筋とはちょっとだけズレたところでひそかに進行してきたテーマがあります。
それがズバリ、四龍が生まれながらに背負っている宿命ともいえるもの…人ならざる力を与えられた代償である「寿命問題」(ネーミングにあまりにセンスがないのはさておき)。
生まれながらに「人」ではなく「龍」として生きることを強要される人生は、言うまでもなくあまりに重いしむごい。龍の身体をもつ限り、100%自分の意思で好きなことをし、好きなところへ行くことなんて絶対にできないわけで。代わりにどれほどの力を与えられていようと、生まれつき「自分自身を捨てろ」と天から(ヨナの世界観においては「龍神様」から) 強いられているに等しいのです。
それだけの負担と犠牲の裏にははたしてどのような意図があるのか。以下、いちファンとしての予想をつらつらと書いています。
『暁のヨナ』における四龍の能力と立ち位置について
四龍の生まれついた過酷な運命
そもそもハクヨナが緋龍城を追われるずっと以前から、高華国内では武芸にすぐれた人間や戦に積極的な人間が脚光を浴び、慕われる傾向がかなり強かったのではないかと思います。その筆頭は地の部族トップのグンテ、もっと遡るなら現王スウォンの父親ユホンでしょう。
そして現在、「神の力」を有しているがゆえにそのトップレベルの武力を祭り上げられている四龍について。
四龍は言うまでもなく、ひどく過酷な運命のもとに生まれてきた存在だと思います。生まれながらに「人である」ことを奪われ、代わりに地上で生きるには到底不釣り合いな能力を与えられている。長くは生きられない、あるいは死ぬことができないという最大のハンディを代償に。
その能力ゆえに生まれ育った里でも忌み嫌われ、どこに行っても”恐れられて”、肩身の狭い想いを抱えて生きざるを得なかったのは本当に哀しいことだし、不幸なことです。そして四龍がどうこうというよりは、もはや四龍が生まれる里そのものの問題になっている点、これはたとえば日本の部落差別問題にも少しだけ通じるところがある気がしてなりません。
小さな村とか集落とか、とにかくどこかに属する以上はできる限り個をころしてその場に溶け込まなくてはならない、もしも溶け込めない事情があるのなら決して表に出してはならない。特に青龍や緑龍の里で強かったこの風潮は、なんというか「和の文化」を重んじる日本ならではの独特な空気感に近いんじゃないかなと。
たとえば作者草凪先生がアジア圏ではなく欧米圏に生まれ育った人だったとしたら、この微妙な空気感はおそらく生まれなかったことでしょう。(もっとも白龍キジャの場合はちょっと話が違うけれども、白龍の里の特殊性について語ると長くなりすぎるので、それはまた別の機会に笑。)
ヒロイン・ヨナが四龍を失うとき=剣と盾が目覚めるとき?
『暁のヨナ』は基本的にヒロインであるヨナ姫の視点から描かれています。そのためか場面一つ一つにおいて、起きている出来事は読者サイドにも非常にわかりやすく伝わるようになっています。
ただ、ふと物語の世界観全体に目を向けると、時々ひどくいびつな空気感を感じるんですね。少女漫画らしく描線や彩色がとても綺麗な作品なのだけど、それとは裏腹に、ストーリーの根底にうごめいている、登場人物たちのさまざまな感情や思惑、展望、そういったものが全く嚙み合っていないからです。
誰がどこを目指してどんなふうに動いているのか、ストーリーの形成において一番大切なポイントが、実はところどころが意図的に”隠されて”いるんじゃないかという気がしてなりません。
ストーリー全体に重く垂れ下がった緞帳を切り裂くような新たな展開がくるまで、『暁のヨナ』において一番大事な部分は明らかにならないでしょう。そしてその時とはおそらく、ユンの育ての親イクスの予言の時「剣と盾」が目覚めるときに他ならないはず。
ヒロイン・ヨナとその従者ハクは、ストーリーの中でいくつもの”喪失”を経験しています。まずは父であり主君であったイル王、そしてヨナにとっては初恋の相手(ハクにとっては無二の親友) だったスウォン。姫君であること、あるいは将軍であり一部族のトップであるという「地位と名誉」。
彼らが次に失うのはきっと「四龍」という存在なんだろうという予感がしています。それがどんな形であろうと、おそらく『暁のヨナ』が最終回を迎えるときには、ハクとヨナ二人の傍に四龍はいないでしょう。いやいたとしても、少なくとも今までと同じ形ではないはず。
おそらくこうだろう、いやこうなんじゃないかという憶測はいくらでもできますが、今は大人しくストーリーの流れを追っていこうと思います。