白泉社が発行する漫画雑誌【花とゆめ】にて連載中の少女漫画『暁のヨナ』。
アニメ化や舞台化、さらにはヨナカフェなどさまざまな関連イベントも開催されており、メディアミックス作品としても注目を集めています。
今回は漫画【暁のヨナ】の91話(16巻収録)『彼はとても大切な友人だった』のネタバレ感想と考察について。
【暁のヨナ】の91話(16巻収録)のネタバレ感想と考察
居場所を奪われ、城を追われて以来、ハクとスウォンの初めての遭逢。「あいつだけは」の血の叫び、城を出て初めて内面の傷を晒したハク。
そしてタイトル『彼はとても大切な友人だった』。”彼”が誰にとっての誰を指しているのは言わずもがな。あらゆる意味で衝撃だったこの回は、多くのヨナファンにとってもいまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
思えばこの回を迎えるまで、ハクはいろいろな意味で”道具”に徹していたんだろうなあと思うんですね。城を出た直後「自分を生き抜くための道具として使え」とヨナに言い放ったあの時からずっと、一貫して彼女の”盾”としてふるまってきたわけで。
そしてユン・四龍と合流し、守る対象が増えてからはさらにその意識が強まっていたように思います。意識的にしても、あるいは無意識にしても、武人であるハクにとっては元来、そういうふるまいのほうが楽でもあったのでしょう。なぜなら、少なくとも”道具”に徹してさえいれば自分自身の傷には目を向けずにすむから。
ヒーロー側の痛み・傷を丁寧に突き詰めて描かれた少女漫画
自身の痛みを周囲に悟らせなかった鉄の男ハク
いわゆる”強い男性”をひたすらサンドバッグ的に描き出す漫画作品は実はわりと多いです。…主に少年漫画・青年漫画カテゴリーではありますが。
一方の『暁のヨナ』は、あくまで少女漫画に類する作品です。さらに言えば絵柄しかりストーリー展開しかり登場キャラしかり、それほどシリアスに寄り過ぎてはいない印象がありますね。ギャグシーンとシリアスのバランスが良くて読みやすい、緩急あるのが良いというレビューもよく見かけます。
そんな中、メインヒーローたるハクだけがどうにも”淡白すぎる”印象があったんですよね。緩急どころか心身のブレを全く見せない、ほぼ思考停止状態。こうした描き方にはやはり何らかの意図といいますか、魅せたい方向性があるんだろうな~と思っていました。
メインヒーローを救えるのはメインヒロインのみ
そしてこの91話。メインキャラクター・ハクとヨナに関するこれまでの展開・演出はすべてこの回のためにあったのではないかというくらい、徹底した描き方がなされていましたね。
通常であれば、ここまで何かを抱え込んだキャラクターといえば、周囲が避難勧告を出して強制退場するパターンも結構あるように思うのですが、ハクに関してはなまじ器が大きすぎるためか、はたまた生い立ちや性格ゆえなのか、とにかく周囲に内心を”悟らせない”。
そしてこの「周囲」には、最も近い存在であるはずのヨナ姫も含まれています。この点も実は結構大きなポイントと言えるでしょう。
ただ、幼い頃からハクの近くにいたヨナ姫は、おそらくわりと早い時点でハクの抱える鬱屈を察していたはず。もちろんあれほどとは思っていなかったでしょうが、ハクが圧倒的な痛みに耐えるための痛覚麻痺をガンガン発動してしまっていることくらいは予想できていたのではないかと思います。
男性側の痛みや傷をがっつり描く少女漫画といえば、個人的に思い浮かぶのは、同じく白泉社の作品『彼氏彼女の事情』。メインヒーロー有馬くんの傷とトラウマをえぐるような展開と描写で知られる作品ですが(個人的にはめちゃくちゃ好きな作品です)、もしかしたら本作『暁のヨナ』にも若干それと似た傾向があるのかもしれません。
ハクを救えるのはヨナだけだ、とは緑龍ジェハの言葉ですが、これこそまぎれもない真実なんだろうなと。カレカノの有馬くんを救えたのはヒロイン雪野だけだったように、ハクを救えるのはやはりヨナしかいないはず。今後の描き方にも注目していきたいと思います。