シンガーソングライター埼山蒼志さんは現在21歳。
2018年に『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』に出演したことがきっかけで広く知られるようになり、歌詞やギターがとにかくすごいと注目を集めている。
今回は天才シンガーソングライター埼山蒼志(さきやまそうし)さんの人気曲【燈】の歌詞の解釈について。
埼山蒼志【燈】『呪術廻戦「懐玉・玉折」』EDテーマ
【燈 / 埼山蒼志】概要
タイトルは【燈】(読み方は「あかり」)。
当楽曲は2023年7月にスタートするテレビアニメ『呪術廻戦「懐玉・玉折」』エンディング・テーマとして提供されたもの。CDリリースは同年7月19日。
【燈】の歌詞について
埼山蒼志の紡ぐ歌詞にはどこか哲学的な雰囲気がある。小難しい言い回しや表現が多い、という意味ではない。どちらかというと、聴く人により捉え方が全く異なってくる…という意味合いが正しい。
例えば【燈】の出だしはこうだ。
僕の善意が壊れていく前に
埼山蒼志【燈】
君に全部告げるべきだった
<僕の善意が壊れていく前に>。
これはとても面白い歌詞だなと思う。一般的には<僕の気持ちが変わる前に>のような普遍性の高い言い回しをすることが多いし、そのほうが圧倒的に共感を呼びやすい。
あえてなのか、こういうふうにリスナーにいろいろ考えさせる歌詞を曲の出だしからぽん、とこちらに放り投げてくる感じ、いかにも埼山蒼志らしくてとても好きだ。
【燈】の歌詞には全体的に、埼山蒼志が初めて世に広く知られることとなった楽曲【五月雨】のもつ独特の雰囲気とよく似た空気感が溢れている。
だからこそ歌詞を眺めているだけでも、埼山蒼志の作り出す世界観が好きなファンならば楽しくてたまらないだろうし、アニメを知らないファン層にとっても結構満足度が高いんじゃないだろうか。
埼山蒼志の【燈】は呪術廻戦の夏油傑の心情を歌ったもの?
ただ、そもそも【燈】はテレビアニメ『呪術廻戦「懐玉・玉折」』のテーマ曲として制作されたものなので、この曲の主人公は呪術廻戦の登場人物・夏油傑であるという前提で聴くのがやっぱり一番自然なのかもしれない。
曲の出だし、<僕の善意が壊れる>。これは、おそらくは術師としての無力感や孤立から闇落ちした夏油傑の”良心”みたいなものが完全に失われてしまったときのことを表している。
君に全部告げるべきだった/ 夜が降りて解けての生活に/ 混濁した気持ち掠れる燈
埼山蒼志【燈】
ここの「君」とは、おそらく悟のこと。
夏油にまだ迷いがあったころは、悟に全て打ち明けていれば…という後悔もあったのだろう。
非術師を見下し、排除しようとする自分と、それを否定する自分とで葛藤する日々。
完全に【善意が壊れる】前、まだ闇落ちしきっていない頃、善悪の狭間でゆらゆら揺れながらしのんでいた生活のことを指していると思われる。
それまでだってわかっても
埼山蒼志【燈】
なんだか割に合わないの 意義がないなんて
”割に合わない”…これは夏油視点で考えると、自分が認められない非術師たちのために術師(仲間)たちの命が犠牲になるなんて納得いかない、割に合わない。自分たちが頑張っていても所詮「意義」なんてないんだな…。
闇落ちの理由がそのまま歌詞に組み込まれているような印象を受ける。
そして曲の後半には、こんな歌詞が出てくる。
エゴといって一括りにしていた
埼山蒼志【燈】
僕とあなたの本当 透明に燃えて
曲の出だしでは<君>だった二人称が、急に<あなた>に変わるのだ。この展開の早さや内面・人格がなんとなく一つにまとまりきっていない不安定さは、夏油の感情の急激な移り変わりをそのままあらわしているのだろうか。
この楽曲はもちろん呪術廻戦のテーマとして、アニメのストーリーに重ね合わせて聴くのも良いし、またアニメをあまり知らなくても一つの芸術として、歌詞やメロディーをじっくり租借しながら聴いてももれなく楽しめる。
正直歌詞を眺めるだけでも、全体に埼山蒼志みが溢れていて結構楽しい。
まるで純文学みたいな一曲だなあと思う。