白泉社が発行する漫画雑誌【花とゆめ】にて連載中の少女漫画『暁のヨナ』。
突然発表された「ラスト3話、年内完結」の衝撃、そして待望の最終話がリリース!というわけで最新ネタバレ感想を書いていきたいと思います。
今回は漫画【暁のヨナ】最終話(47巻収録・276話)のネタバレ感想・考察について。
【暁のヨナ】最終話(276話・47巻)のネタバレ感想・考察
※最終話のネタバレを含みます。
ヨナ即位エンド!「伝説の少女」から「王家の女の子」に戻ったヨナ

さっそくですが、まずは最終話のラストについて。ここはやはり予定調和という感じで、ヒロイン・ヨナが新高国王として即位する展開に落ちつきました。
おそらく多くの読者が予想していたラストだと思いますし、王族の人間がメインの群像劇として非常にわかりやすく、希望に満ちたしめくくりだったかと思います。
現王スウォンが自ら退位を望む展開も、46~47巻を通して丁寧に描かれてきた流れであり、物語として違和感のない帰結でした。
この終わり方、『暁のヨナ』に似た作品としてよく挙げられる田村由美先生の『BASARA』のラストに近いものがある気がしますね。
『BASARA』では、「伝説の少女」として孤独に戦い続けてきたヒロインが、最終的に自分の兄を殺した宿敵と恋仲になり結ばれます。
もっとも『暁のヨナ』ではそこまでセンセーショナルな演出はなされていませんが、やっていることの本質は全く同じだと思います。
まぁスウォンが「あの夜の謀反は間違っていた」と明言する描写は少し意外でもありましたが、彼が“王”ではなく“一人の人間”に戻る描写として必要不可欠なシーンでもあったのではないでしょうか。
しかしそんなスウォンに対し、ヨナ姫が一貫して「ヨンヒ様」の存在を繰り出してくるまどろっこしさ、まわりくどさと言ったら…! つくづくスウォンの心に触れる数少ないポイントを正確に捉えている娘だと思います。
ところで、個人的には立場が弱くなったスウォンをかばおうとするケイシュクの姿が印象的でした。スウォンのためならば、本来相容れない立場であるヨナに赦しを乞うことも厭わないのはなんだかんだでさすがだと思う。
そもそもソガたちと違い、最後まで一貫してスウォンを支え続けたのは結局彼だけでしたからね。
故ユホンしか見えていなかった他の側近たちとは違ってケイシュクは唯一、国を背負う器としてスウォン個人を見ていたのだと思います。
まあ彼を嫌う読者が多いのもわかるんですが、少なくとも「参謀」としての器を持つ人間だったと思うんですよね。なんかちょっと見直したよ。
ハクヨナの結婚式までは描かれなかった件について
ところで、最終話でハクヨナの結婚式の描写があると期待していた人、結構多いのでは?
もちろんラブロマンスの締めとして期待されるべきラストではありますが、個人的には「戴冠式」の描写までで十分だったと感じています。
何より国が戦と災害で疲弊しきっている時期に、
「女王と護衛が結婚しました!私たち幸せになりま~す!」なんてやってたら、戦でいろんなものを失った民衆は完全に引くでしょう。
それこそ、為政者としての自覚を欠いたふるまいに見えてしまうはず。
そもそも本作は、少女漫画・恋愛漫画という括りで語られることが多いわりに、ラブ描写が著しく少ない作品です。最終話で急に趣向を変わることもなく、あくまでヨナらしいラストに落ち着いてほっとしました。
とはいえ、ハクとジェハがこっそりやってた恋バナをしっかり盗み聞き()しつつ、ちゃんとわかっているくせに「私の話じゃないのか…」とすっとぼけるヨナの態度がいかにもらしくて好きでしたw
良くも悪くも、どこまでも本っ当に「姫さま体質」なんだよなあ。
ハクが国の状況を見極める冷静さを保ちつつ、ヨナとの未来をしっかり見据えているのもとてもよかった。どうか末長くお幸せに。
それぞれの場所に戻ることを決めたキジャジェハシンア

そして、『暁のヨナ』を語る上で欠かせない存在――四龍について。
彼らがそれぞれ生まれ育った里へ戻る決断をしたのは想定内でしたが、言い出しっぺがシンアだったのがとても良かった。
シンアは四龍の中でじつは誰よりも芯が強く、静かな意思を持つ人物です。
もともと龍の目に頼らず、剣の腕を磨いて生きてきた彼だからこそ、真っ先に「普通の人間として」生きる道を選べたし、決して居心地が良かったとは言えない里へ戻る決断ができたんじゃないのかな。
一方、「四龍」であることを誰より誇りにしていたキジャに関しては、正直いちばん葛藤が深いんじゃないかと思います。実際、四龍のなかで一番表情に影があった気がしましたし、まあそりゃそうだよね。
四龍であることを生きる意味としてきた彼が、「普通の人間」として自身の価値を見出し、先を生きていく覚悟を決めるには、きっともう少し時間がかかるんだろうなあ。
ジェハは……どうでしょうか。元々自由を愛する彼らしい選択をする気もしますし、いずれにせよ、彼はどこにいても生きていける強さを持っていると思いますが。
まあ、いちばん複雑なのはやはりゼノでしょうね。
彼は四龍の中で、もっとも長く、もっとも深く「呪い」に縛られてきた存在。
役目が終わったからといって、すぐに心身ともに自由になれるわけがない。
とはいえ、国中を放浪する生活にもさすがに飽きているでしょうし、かといって帰る場所もない。結局、ゼノだけは今後も城に残るのではないかと思っています。
個人的には、王ではなくなったスウォンとこれから少しずつ距離を縮めていくんじゃないかなあと予想しています。
何といっても、緋龍王の血を引く存在はゼノにとって特別で、長い時間をかけて見守ってきた“家族”のようなものですからね。
そしてある意味、一番「緋龍王伝説」の被害を被ったもの同士ですし、実はお互いに誰より深くわかりあえるんじゃないでしょうか。
欲を言えば、ハクとスウォンの腹を割った対話が見たかった
欲を言えば、ひとつだけ心残りがあります。
それは、ハクとスウォンが真正面から腹を割って話す場面、言葉を交わす場面が最終話では描かれなかったこと。
この二人の関係は、『暁のヨナ』という物語において最も歪で、最も切実な関係性でした。
友情、憎しみ、後悔、罪悪感――すべてが絡み合って、簡単に言葉にできない感情を抱え続けてきた二人。
……のわりには、ここまでヨナを介して意思を伝えあう描写があまりにも多すぎたかと思うんですよね。言い方はあれですが、ふたりとも随所随所で無意識的にヨナ姫を”ダシにして”いないか?と。
端的に言えば、即位だの退位だのの話をしているヨナとスウォンの横に、やっぱりハクも居てほしかった。
あそこで王族どうしの話に立ち入らないハクは、本当に一巻冒頭の物語序盤のころの「俺はしょせんただの護衛だから」的スタンスを何も変えてないんだよなあ。いずれ女王ヨナの伴侶となる身だというのに。
まあハクの気持ちもわからんではないが……正直唯一ここだけはもの足りなかったよ~!
なんというか、読者の想像に委ねる余白が”残されすぎ”ではないかと思いましたね。
『暁のヨナ』は復讐劇も王道ファンタジーでもなく「群像ミステリー」

最終話を読んで改めて思うのは、『暁のヨナ』という作品は、単なる復讐劇でも王道ファンタジーでもないということ。
カテゴリー付けするならば、これはまぎれもなく「群像ミステリー」なのだと思います。
「簒奪者」であるスウォンが、最後までヒロインサイドによって「迫害」されなかったのがその証拠でしょう。
誰が正しく、誰が間違っていたのか。何が最善だったのか。
答えは、最後までひとつに定まりません。それぞれがそれぞれの正義と後悔を抱えたまま、それでも前に進んだ。
だからこそ、この最終話に派手なカタルシスはありませんでしたよね。でも、むしろ静かで現実的な着地が”らしく”て安心感がありました。
伝説の緋龍王は、 ただの王家の女の子に戻った。
これはきっと、多彩なキャラクターたちが呪いから解放される物語でもあったのだと思います。
***
最後になりましたが、アニメ2期おめでとうございます!! そちらの感想は、また別記事で書いていきたいと思います。
そして、ここまで自分本位な感想記事をお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。
ブログ「いとのろぐ」はまだまだ続きますのでいつでもお立ち寄りくださいね。それではまた!
▼『暁のヨナ』に関する過去記事のほぼすべてを、以下のnoteにまとめています。
かれこれ10年推してきた漫画『暁のヨナ』が最終章に突入したので、これまでの感想ブログをまとめてみた。
▼47巻ネタバレ感想
275話 274話 273話 272話 271話 270話 269話 268話
▼当ブログのヨナ記事BEST5(PV数は執筆時点のものです)
■5位(9458 PV):271話(47巻) ネタバレ感想| ハクとスウォン、二大巨頭が大ピンチに
■4位(9668 PV):【暁のヨナ】アニメは打ち切り?2期・続編はないの?
■3位(11982 PV):ハクとヨナは無事に結ばれる?胸キュンシーンまとめ【ネタバレあり】
■2位(15766 PV):254話(44巻収録) ネタバレ感想と考察 ゼノの願いは本当に叶うのか?
■1位(16534 PV):【暁のヨナ考察】作中の死亡キャラ5選についてヨナファンが考えてみた

