1993年放送のTBSドラマ『高校教師』は、真田広之演じる生物教師と桜井幸子演じる女子生徒のあいだに生じる禁断の愛を描いたストーリー。脚本は野島伸司。
ただ、その特殊な設定や表現・展開に『気持ち悪い』など賛否両論の意見もみられます。
今回は真田広之と桜井幸子の主演ドラマ『高校教師』第10話「ぼくたちの失敗」のあらすじとネタバレ感想・考察について。
真田広之・桜井幸子主演ドラマ『高校教師』10話のあらすじ
9話ラスト、ついに繭を父親から引き離した羽村。ひとまず、繭は羽村の部屋で寝泊りすることになった。羽村自身はビジネスホテルに泊まっている。
あのときの僕たちはただそこに 砂の城を築こうとしていたんだね
高校教師10話
ほとんど人のくることのない 小さな公園の片すみに
「人間は本気で人を愛すると狂いますよ」
新庄に殴られ大けがを負った藤村は入院していた。
羽村は藤村の病室を訪れ、新庄の刑事告訴を取り下げるよう頼み込む。が、藤村は自身の非を決して認めようとしなかった。
「人間はね、本気で人を愛すると狂いますよ。理性やモラルなんて何の歯止めにもなりません。例外なく人間はね…。」
僕は相沢直子を愛していたんですよ…。藤村の言葉を、羽村は黙って聞いていた。
繭のことを諦めきれない父親
父親のもとを離れた繭は、羽村の自宅に身を寄せている。ただ、羽村自身は相変わらずビジネスホテルに泊まっていた。
繭、戻ってきてくれ…。その男を信用するな。その男は本当にお前を愛してなどいない…。身体の調子がよくない。お前がいないと節制する気にもならないからねえ…。
毎晩のように電話してくる父親は、ついには羽村の家の前まで押しかけてきた。
「繭、戻ってきてくれ…、先生も一緒でもいい。先生、先生も一緒に、3人であの家に住みませんか。なんで…なんで返事をしてくれないんだ!」
「……」
語気も立ち振る舞いも全てが尋常ではない様子の父親は、どうやら本当に体の調子が悪い様子だった。
戻ってきてくれ…。力なく媚びるように、そして徐々に荒くなっていく怒声を、繭は黙って聞いていた。
「女の子はもっと、ちゃんと好きになるよ」
直子は入院中の藤村のもとを訪れた。
新庄の立場を守るため、これまでに先生とのあいだにあったことを全て話す。周囲から何を言われても負けずに頑張る、なぜならまだ人生は長いから…。
そう告げた直子を藤村はなじるが、彼女の決意は固かった。
「先生。女の子は、もっとちゃんと好きになるよ。男より、ずっと”真剣”してるよ」
最後にそれだけ言って、直子は藤村に背を向けた。
繭と父親とのことをどうしても割り切れない羽村
表面上は穏やかな時間が過ぎていった。
羽村は新庄の家によばれて食事をしたり、繭は直子とカラオケに遊びに行ったりしてそれぞれ楽しむ。が、羽村の心には相変わらず、繭と父親とのあいだにあった出来事が暗く影を落としていた。
教師として彼女を受け止めることはできる。でも、男としてはどうしてもどこかで拒絶してしまう気持ちがある。そう打ち明けた羽村に、新庄はそれなら距離を置いたほうが互いのためになる、と冷静に諭す。羽村は何も答えず、考え込んでいた。
羽村のもとを去った繭
新庄の家に一晩泊まった羽村は、翌朝自分のアパートへ戻った。繭がいるはずの部屋には、しかし誰の姿もなかった。
『ごめんなさい、しばらくウチに帰ります』
書き置きをみた羽村は、力なくその場に座り込んだ。
「なぜだ…なぜだ!」
羽村は繭が父親と暮らしていた家を訪れる。しかしそこには二人の姿はなく、業者たちが荷物を運び出しているばかりだった。
「あ、あなた、もしかして学校の先生じゃないですか?」
「え、ええ…」
「これ、あなたにって」
業者の男に手渡されたのは、繭からの最後の手紙だった。
『先生、あたしは今、急いでこの手紙を書いています。とっても急いでいるのに、何から書いていいのかわかりません…』
羽田空港へ向かうタクシーの中、羽村は繭からの手紙を読んだ。繭と父親の関係性がいつ頃から歪なものへ変わっていったのか。死んだ母から憎まれていたのはそのためだということ。素直な言葉で綴られた手紙だったが、行間からは繭の優しさと諦めが滲んでいた。
タクシーは羽田に到着した。羽村は、広い空港内で繭と父親の姿をさがす。人の群れの中で、羽村は誰より憎い男の姿を見つけた。羽村は静かに近づき、繭の家から持ち出した工具で父親を刺した。
新庄先生(赤井英和)と相澤直子(持田真樹)は今後どうなっていく?
ラストシーンの衝撃はさておき、本話『ぼくたちの失敗』の最大の見どころは実はラストではなく、相澤直子(持田真樹) が藤村に放った一言「女の子はもっとちゃんと好きになるよ、男よりずっと真剣してるよ」のほうなんじゃないかと個人的には思っている。
この台詞はまさに繭や直子そのものを、ひいては『高校教師』という作品自体を実に端的にあらわしているような気がする。そのぶん、繭に対してどこか及び腰な羽村や弱い相手を暴力で支配する方法しか知らない藤村にはものすごく重い一言だと思う。
そして『高校教師』作中で唯一、直子のこの言葉を投げつけられてもビクともしないであろう男性はただ一人。そう、本話にてついに学校を去ることになってしまった新庄先生(赤井英和)である。
『高校教師』という作品には言うまでもなくさまざまな要素があるけれど、それでも作品の軸にあるのはやっぱり”恋愛””男女の愛”という非常にベタなものだと思う。そういう作品だからこそ、作中に新庄のような骨太な性格の男性が一人いるだけで、ストーリーがとても奥深いものになる。
どんな展開が待っていようと、画面の中に新庄がどっしり構えていてくれるのがありがたい。倫理やら何やらが破綻した登場人物それぞれに、ストレートの正論をその都度投げかけてくれるから、それが究極の救いになる。
直子が藤村にあの一言を言えたのは、やはり新庄のおかげなんじゃないかと私は思う。正しい倫理観を持った男性にしっかり”守られた”からこそ、彼女は藤村に心まで壊されずに済んだ。
新庄と直子、この2人がどうなっていくのかについては、当然ながら本作において語られることはない。が、それでも、この2人の未来が明るいものであることは視聴サイドにははっきりとわかる。ただ、それはある種、メインカップル羽村と繭との対比を狙ったものなのかもしれないけれども…。
次回は最終話。第11話『永遠の眠りのなかで』。
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