映画「マチネの終わりに」ネタバレ感想 未来は常に過去を変えている

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エンタメ

本作は2016年に刊行された平野啓一郎さんの著作『マチネの終わりに』を原作とした、二人の男女の物語である。映画版では福山雅治が主人公・蒔野 聡史を、石田ゆり子がジャーナリストの女性・小峰 洋子を演じている。本作の舞台は東京、パリ、ニューヨーク、バグダッドと複数の都市にわたり、そのスケールの大きさも注目されている。

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「マチネの終わりに」概要

本作は、40代の男女の出会いとすれ違い、別れから再会までの6年間を描いた大人向けのラブストーリーである。

福山雅治さん演じる蒔野は、天才と謳われるギタリストでありながらも、自身の現状に納得がいかず常に苦悩を抱えている。石田ゆり子さん演じる洋子はそんな蒔野に惹かれるものの、あることがきっかけで彼とすれ違い、そのまま別れを迎えてしまう。

その後、蒔野と洋子はそれぞれ別の人と結婚し家庭を築くが、やはり平穏な日常はいつまでも続かない。不倫、離婚、過去のあやまち、さまざまな問題が立ちはだかる中、二人はそれぞれ「人生で一番愛する存在」について考える。

「未来は常に過去を変えている」

未来はいくらでも変えられるが、過ぎ去った過去はいかなる手段をもってしても変えることはできない。…というのが現在を生きる私たちの共通認識であり、それを強調している小説や映画作品は多い。

しかし、本作「マチネの終わりに」劇中では全く逆の発想が、事あるごとに強調される。「未来は常に過去を変えている」。

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人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。(「マチネの終わりに」より引用)

過去が変わると言っても、当然ながら過ぎ去った時間が全く違うものにすり替わるようなことはありえない。正確には「過去のもつ意味合い」が変わるというのが正しい。

劇中にて互いに惹かれ合った蒔野と洋子は、しかしあらゆる問題や障害に阻まれ、結果、6年間のうちたった3度しか巡り合うことはなかった。それでも、離れていた期間が無駄なものだったわけではない。

再会に至るまでの全ての出来事が、二人が再び関係を築いていくためには必要不可欠なものだったことは、ラストシーンにて目を合わせた瞬間の二人の表情からもうかがえる。

「マチネの終わりに」はこんな人におすすめ

「マチネの終わりに」の大きなテーマは「恋愛」であるものの、メイン二人が同じ場所でともに過ごす時間は劇中ではあまりに短い。

離れていた苦しい時間を耐え抜き、再び出逢った瞬間に、過去にあった痛みはすべて何らかの意味のあるものへと変わった。痛みにきちんと向き合った人でなければ、過去の苦しみに意味を見出すことなどできないだろう。それぞれ一人きりで向き合ってきた蒔野と洋子だからこそ、磁石が引き合うように互いに惹かれ合い、そして時を経て再び巡り合った。

本作はラブストーリーというカテゴリーに属するが、実際に描かれているのは人生の難しさや痛み、そして過去にとらわれず未来を見据えることの大切さである。

いま現在何かに苦しんでいる人、あるいは過去の痛みを自分の中で昇華できず、未来が見えなくなっている人にはとても響く作品だと思う。

「マチネの終わりに」原作小説

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