『暁のヨナ』最終回ネタバレ感想| ヨナ「私 国王になるから」軽すぎるテンションへの違和感と個人的考察

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エンタメ

16年もの連載期間を経て堂々完結の花ゆめ作品『暁のヨナ』。アニメ2期決定おめでとうございます! 完結の寂しさもすっかり薄れて映像化への期待に胸膨らませる日々です。

ところで、最終回の内容について個人的にひっかかっているのが、仲間たちに向けたヨナの言葉「私 国王になるから」。……え、テンションおかしくね? 言い回し軽すぎない? ということで、蛇足ながら考察してまいりたいと思います!

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『暁のヨナ』最終回ネタバレ感想と考察

メイン感想は以下記事にて公開済みです!

▶『暁のヨナ』最終回(276話) ネタバレ感想と考察| ヨナ即位エンド!伝説の少女はただの王家の女の子に戻った 

この記事では往年ファンとして、よりコアな視点から考察を進めていければと思います。

「私、国王になるから」えっ……なんかテンション軽すぎん!?

『暁のヨナ』最終回において、読者の胸に強く残った台詞のひとつが、ヨナがハク、ユン、四龍に向けて告げた「私、国王になるから」という一言でしょう。

「私、国王になるから」

いや、軽っ!
軽すぎません!?
テンション的に「明日コンビニ行くから」「ちょっと洗濯回すから」くらいのノリなんですよ。ユンの「明日お出かけするから」発言、あれ以上に的確な比喩は存在しないと思います。

言うまでもなく、この言い回しは、物語全体の重みや積み重ねを思えばあまりにあっさりしています。

父は殺され、王位は簒奪され、命を狙われ、国を追われ、ボロボロになりながら旅をして、民の現実を知り、四龍と出会い、血と犠牲を積み重ねてきたわけです。
「はい、じゃあ戻りますね〜」で済む話じゃないんですよ。

本来なら、
「私は……この国を……背負います……!」
くらいの溜めと震えがあってもいい。むしろそうであってほしい。
BGMが盛り上がってもいい。
ハクが息を呑んでもいい。

しかしながら、最終回のヨナは「王位につく」という覚悟を驚くほど淡々と口にしています。

悲壮感も、覚悟を誇示する力みもない。その姿に戸惑いを覚えた読者さん、実は少なくないのではないでしょうか。

今のヨナにとって「王位」とは何か

この、ある種「異常な」ヨナのテンションはいったい何を意味しているのでしょうか。

当然ながら、それは「ヨナが王位を軽んじている」からではないはずです。

それなら、考えられるのはあとひとつだけ。
彼女にとって王位は、もはや“特別なもの”ではなくなったということなのでしょう。

最終回のヨナの反応はまさしく、重すぎるものを全部飲み込んである種の悟りを開いた人間のテンションなんです。

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物語序盤のヨナにとって、王とは遠く高い存在でした。父の背中を見つめながらも、自分がそこに立つ未来など想像すらしていなかった。幸

せな結婚をすること、愛されて女としての幸福を手に入れることだけが彼女の目指す人生の目標だった。

でも旅をするうちに気づいてしまったんですよね。
「王」とは結局、ただの激務担当の人間にすぎないということに。

民の声を聞き、間違え、迷い、それでも決断し続ける人間の姿を、ヨナ自身が体現してきましたから。

そりゃテンションも落ち着きます。
理想も幻想も全部剥がれて、「あ、これ仕事だな」って悟った人の顔になるんです。

だから最終回のヨナにとって「国王になる」は、
夢の宣言でも、悲劇の覚悟でもなく、「やることリストの次の項目」にすぎないんじゃないかな。
それはすでに彼女が長いことやってきたことの延長線上にある、ひとつの選択でしかないのだから。

最終回のハクヨナにみる、今後の恋模様の行く末は

「国王になるから」と断定形でありながら、その口調に決意の演説めいた響きがないのは、彼女が王になる覚悟を今まさに決めたのではなく、とうの昔に心の中では決め終えていたからでしょう。長い旅のどこかで、知らず知らずのうちに。

そんなあまりに”強くなりすぎた”ヨナが唯一、心を揺らす相手はもはやひとりだけ。
本作のメインヒーローたる、ハク様に対してだけなんですよね。

最終回にて、ヨナはスウォンとふたりで話し合う場面でも、また「国王になる」と口にする場面でも、ハクに向かって何かを“確認”することはしていません。

許可も、同意も求めず、ただ事実として告げるだけ。このヨナの態度、よく考えれば非常に面白いなと思うんですよね。恋愛的な甘さとは全くなくて、それなのに極めて成熟した信頼関係を感じさせる。

かつてのヨナなら、ハクに寄りかかるか、あるいは彼を遠ざけることでしか前に進めなかったはずです。しかし最終回のヨナはそのどちらの行動もとっていません。

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今のヨナがハクに言いたいことはただひとつ。
私は私の役割を引き受けるから、あなたはあなたの立ち位置でそこにいてほしい
その言外のメッセージが、この淡い言い回しの中は含まれている気がしますね。

この断固とした姿勢は、ユンや四龍に対しても同様です。

四龍はもはや“王を守るための存在”ではなく、ともにに歩き、共に悩み、時にヨナを否定することすら許された仲間となったわけです。

だからこそ、重々しい決意表明は不要というもの。ヨナが国王になることは彼ら全員がすでに共有してきた現実であり、今さらドラマチックに言い直す必要は全くないんですよね。

スウォンは王になるために「命を削った人」

そしてもう一点、この台詞は「スウォンの物語」との明確な対比にもなっているように思います。

スウォンは王になるために、強い理想と覚悟を言葉にし、行動で示し続けた人物でした。彼にとって王位は背負うべき使命であり、命を削ってでも果たすべき目的だった。父をころされた幼い日からずっと、それだけ目指して歩いてきた。

一方のヨナは、王位を“目指す”物語をすでに終えています。

だからこれだけテンションが低い。
低いけど、ブレない。
これ、覚悟が足りないどころか、覚悟が日常に溶け込んだ人の態度なんですよ。

彼女は、王になるために何かを切り捨てる段階をとっくに通り過ぎている。
失うことも、傷つくことも、選ばなければならない残酷さも、すでに嫌になるほど経験してきましたからね。

だからこそ、最終回の戴冠式でのヨナは、1巻のスウォンと同じ場所に立ってはいますが、王位というものに対する意識はまるで違うんだろうなと思うわけです。

王とは悲壮であるべきだ、孤独であるべきだ、という物語的な呪縛を、彼女は最後にさらりと手放してみせた。これが本当に、ヨナの一番すごいところなんだろうと思っています。

そういう意味では、『暁のヨナ』は結局のところ、「英雄譚」ではなく個人の「生き方」の物語だったといえるでしょう。

職業柄コラムっぽくきれいにまとめたくなっちゃうので書いておくと(笑)、
「王位」に対するヨナの姿勢、そしてそこにたどり着くまでの描写の数々は、読者に向けた静かな問いかけでもあるんじゃないのかな。

肩書きや役割に振り回されながら生きる私たちは、どんな経験をどれだけ積めば、自分の人生を「お出かけに行くくらいのテンション」で軽々と引き受けることができるのか——。

読み終えたあと、じわじわ効いてくる。
やっぱり草凪先生はお人が悪い!
予定調和に見せかけて実はめちゃくちゃエッジのきいた着地点、最高でした。

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最終回のメイン感想は以下記事にて公開済みです!

▶『暁のヨナ』最終回(276話) ネタバレ感想と考察| ヨナ即位エンド!伝説の少女はただの王家の女の子に戻った 

『暁のヨナ』に関する過去記事のほぼすべてを、以下のnoteにまとめています。

かれこれ10年推してきた漫画『暁のヨナ』が最終章に突入したので、これまでの感想ブログをまとめてみた。

47巻ネタバレ感想

275話  274話 273話 272話 271話 270話  269話  268話 

当ブログのヨナ記事BEST5PV数は執筆時点のものです

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