青葉市子『いきのこり●ぼくら』歌詞が怖い? 震災を意味している?

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音楽

シンガーソングライターの青葉市子さんをご存じだろうか。2010年に1stアルバム『剃刀乙女』でデビューした彼女は、フォークシンガーとして国内外から高い評価を受けており、現在もCMや舞台音楽の制作、ナレーションなど幅広い表現活動を続けている。

今回は、青葉市子さんの名曲『いきのこり●ぼくら』の歌詞について。

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青葉市子『いきのこり●ぼくら』概要

青葉市子さんの『いきのこり●ぼくら』は2013年発売の4thアルバム『0』収録曲。曲調はやさしく軽快な感じで一見明るい雰囲気があるが、歌詞をよくみていくうちにその印象は一変する。

曲タイトル『いきのこり●ぼくら』とある通り、歌詞には「貴重な生命」「どれが僕の血なのか」「新しい亡骸」など明確に大勢の人の死をうかがわせる描写がいくつもあり、そのため震災や戦争など大きな出来事をあらわす楽曲なのかと話題になった。

『いきのこり●ぼくら』歌詞について

『いきのこり●ぼくら』は震災や戦争を意味している?

『いきのこり●ぼくら』は、震災から2年ほど経ったある日、青葉市子さん自身がみた鮮明な夢をもとに制作されたものである。夢をみて、起きてすぐにこの曲を作ったということだった。(過去インタビューより)

そのため、震災をはっきり意識した上で制作されたというよりは、青葉市子さん自身が震災という出来事を受けて抱いた思いや内面への影響、変化などを音にして表現した、という解釈がしっくりくる。

《ひどく汚れた足の裏 どれが僕の血なのかわからないね /大きな山の麓には 死者の国 / 新しい亡骸を 峡谷へ落とす 》

『いきのこり●ぼくら』歌詞引用

情景描写がとても鮮明な歌だ。静かに語りかけるような歌い方が、曲の世界観そのものをより神聖な雰囲気に近づけている。荘厳な、といってもいい。

曲タイトル、そして歌詞のラスト一行にあるように、この楽曲は「いきのこりぼくら」の視点で描かれている。

逃げて逃げて、長いトンネルを抜けてようやく辿り着いた日本家屋。いきのこった僕らの足は皆ひどく汚れて、赤い血がべっとりしみついている。

この曲は、具体的な何かを訴えようという明確なメッセージを秘めた曲ではないように思う。ただ、こうした出来事が起こったことを忘れてはいけないという戒めのようなもの、あるいは亡くなった大勢の人たちへの鎮魂、そうしたものが歌詞の行間一つ一つに静かにただよっている。まるで祈りのような曲だと感じた。

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備考:TikTokでの使われ方「ボストンバッグには3日分の服と…」

これは余談だけれど、一時期TikTokにて「ボストンバッグには3日分の服とあなたの写真…」という歌詞の音源が流行ったことがあった。その音源のもととなっているのは実はこの曲だ。

ただ、実際の歌詞は「ボストンバッグには3日分の服とあの子の写真」である。また、TikTokで使用された音源の再生速度はかなり速めにアレンジされており、原曲『いきのこり●ぼくら』のもつ静かで落ちついたイメージとはだいぶ雰囲気が違う。

歌詞が微妙に違うことや、また原曲の雰囲気や意図するところとは全く異なる使われ方をしたということで、一時期は非難する声も多かった。

この記事は、TikTok内での当楽曲の使われ方を非難する意図では決してない。ただ、”動画クリエイター”なる人たちが飽和状態にあるような今の時代、音源としてなにげなく耳にしていた音楽が、実は当初のイメージと全く異なる意図をもつ場合があることは念頭に置いておきたいと思う。

原曲には制作者の真摯な想いが込められているのだから、第三者がその形を勝手にねじ曲げるような行為はやっぱり控えるべきなのじゃないだろうか。

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