1993年放送のTBSドラマ『高校教師』は、真田広之演じる生物教師と桜井幸子演じる女子生徒のあいだに生じる禁断の愛を描いたストーリー。脚本は野島伸司。
ただ、その特殊な設定や表現・展開に『気持ち悪い』など賛否両論の意見もみられます。
今回は真田広之と桜井幸子の主演ドラマ『高校教師』第9話「禁断の愛を超えて」のあらすじとネタバレ感想・考察について。
真田広之・桜井幸子主演ドラマ『高校教師』9話のあらすじ
この記事では本編あらすじ全ての詳細な文章化はしておりません。
ネタバレ要素はありますのでご注意ください。
前話『隠された絆』にて、ついにヒロイン・繭とその父親との歪んだつながりが明らかになった。決定的な場面を目の当たりにし、何も言えず、何もできないまま立ちすくむ羽村。そのまま、逃げるようにその場を後にする。
翌日、繭は学校を休んだ。しかしその翌日は、何事もなかったかのように学校に顔を出す。
会話は必要最小限のことばかり。二人があのことについて話すことはなかった。
親友・直子の真実を知る繭
繭は親友・直子の部屋で一緒に映画をみて、ただ和やかな時間を過ごす。飲み物を持ってくるといい、直子が席を外した。
残された繭は、一人画面の中をじっと見つめる。小さな画面に広がる濃厚なラブシーン…。繭はふと息苦しさを覚え、軽い気持ちから傍にあった違うテープをセットする。しかし再生されたのは、直子が藤村から受け取った例の動画だった。
ちょうど戻ってきた直子が、手にしていたグラスをとり落とす。
「赤ちゃんって…」
「……」
返事はなかったが、直子の悲痛な表情に繭はすべてを察した。
新庄と羽村が藤村の本性を知るとき
元のテープは藤村が持っている…。直子に聞いた情報をもとに、繭は藤村のロッカーを探る。出てきたのは直子のテープだけでなく、おそらくは他の生徒のものも…。繭は手に入れたテープを、新庄の机の上に置いておいた。
理科室にて、新庄は羽村とともにビデオを再生する。
「何やこれ…」
二人は初めて藤村の本性を、そして直子が隠していたことを知ったのだった。藤村に直接、問い詰めるが彼は自分の非を認めず、のらりくらりとかわすばかり…。
「現代の女性には絶望してるんですよ…僕だけじゃない、あなたたちも含めたすべての男性がね…」
殴りかかる新庄を羽村は何とか止めた。
こんなあたし嫌だよね
理科の追試を受ける繭の横顔を、羽村はそっと見つめる。
「きみはもう、学校へは来ないと思ったよ…」
「……」
採点をしながらそう言う羽村に、繭はうつむいたままだった。
「誰か、力になってくれる人は…?」
「…やっぱり、すごくショックだった。先生にはいちばん知られたくなかったの。いっぱい、嫌われると思ってたから…」
「……」
「でもほっとしてるところもあって…。きっと、ずっといつも、ビクビク怖かったから。」
「……」
「それに…それにひょっとしたら、先生ならって…、だから、頑張って来たの。一生懸命来たの。でもやっぱり先生は嫌だよね。こんなあたし、やだよね。でもあたし、先生のこと大好き。…さよなら」
羽村は何も答えなかった。
繭を受け入れることを決めた羽村
夜遅く、羽村は繭の家を訪ねる。
「すぐに荷物をまとめるんだ。彼女はぼくが連れていきます。とてもこの家には置いておけない」
「私は実の父親ですよ…。君は一体何の権利があって…」
「ぼくは…彼女を愛しています」
自分と娘は誰よりも深いところで結ばれている。羽村に反論する父親に、しかし繭は「先生と一緒に行く」と。
荒れ狂う父親を尻目に、二人は手を取り合い家を後にした。
高校教師9話『禁断の愛を超えて』の感想考察
9話にてもっとも印象的だったのは、序盤のシーンで流れる森田童子さんの楽曲『君は変わっちゃったネ』。
全編通してみても、この曲が本作の挿入歌として使用されるのはおそらくこのシーンが初めてなのではないでしょうか。
久しぶりだネ ぼくは
相変わらず
甘い夢を追っていますそんなぼくを
森田童子『君は変わっちゃったネ』
あなたは子供っぽく
見えるかしら
センセーショナルなシーンであえてなのか、バックに流れる森田童子さんの優しげな声色が起きている出来事の痛ましさを際立たせます。
本作の設定上、そしてストーリー展開自体を考えても、繭が「可哀そうな女の子」であることはもはや否定できません。が、そこをひたすら強調するような演出があまりみられず、ひたすら羽村視点で淡々と進んでいくようなある種の淡白さが、やっぱりこの作品の面白さの一つなのかなと思いました。
そしてそんな静かな流れの中、悲劇のヒロイン・繭に改めて「こんなあたし、嫌だよね」と言わせるのはすごいな、とも。普段の繭が決して激情型ではなく、むしろ感情を押し殺してきたキャラクターだからこそ、あの台詞は羽村(と視聴者)にはずしんと響いたことでしょう。
ずっと追い求めてきた羽村との仲が目の前で終わろうとしているのに泣き叫んだりわめいたりせず、「やっぱり嫌だよね」の一言で手放せるのが繭という女性で。
彼女があっさりした態度であればあるほど、皮膚を突き抜けて血管の奥深くまで入り込んでくるような鋭い痛みがそこに表現されているような気がします。
なお、今回は藤村の内面に大きく迫るシーンやストーリー展開もありましたがここではあえて触れず、ヒロイン・繭と羽村二人の関係性に着目しつつ記事を書きました。藤村についてはまた別記事でおいおい。
繭と直子は親友だけれど、恋愛観や価値観については驚くほど違う部分があるかと思うのですよね。あるいは、だからこそあれだけ仲良くいられるのかもしれませんが。
次回は第10話『ぼくたちの失敗』。物語の終焉はどう描かれるのか、必見です。
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