1993年放送のTBSドラマ『高校教師』は、真田広之演じる生物教師と桜井幸子演じる女子生徒のあいだに生じる禁断の愛を描いたストーリー。脚本は野島伸司。
ただ、その特殊な設定や表現・展開に『気持ち悪い』など賛否両論の意見もみられます。
今回は、ドラマ『高校教師』に出演した真田広之さんとその役柄・羽村先生について。
1993年ドラマ『高校教師』にて真田広之が演じた役柄・羽村先生について
ドラマ『高校教師』にて主演を務めた真田広之さんが演じた役柄は、本作の主人公でありメインヒーロー的立ち位置である人物・羽村先生。
生物教師という設定ではあるものの、実質ほぼ大学院生。あくまで一時的に教職に就き、お茶濁し的に働いたその後は再び大学に戻りたいと考えている、何とも責任感ややる気に欠ける一面も。
どこかぬけている性格や天然っぷりも相まって、桜井幸子さん演じた母性溢れるヒロイン・繭とある種対照的に描かれたキャラクターとも言えます。
そうした性格やキャラクター性もあり、視聴者サイド(主にファン層)からは「可愛い」という声も多かったようですが、やはりそれはラストの展開にてようやく表層に出てくる彼の”カッコ良さ”とのギャップを強調するための演出でもあったのかなと思うんですね。
ヒロイン・繭を心身ともに守りぬいた姿勢はやはりかっこいいですし、最期まで教師たる態度を保ちながら繭と相対しようとしていたその姿勢も、視聴者の心をがっつりつかんだ理由なのではないでしょうか。
羽村はなぜ、空港で繭の父を刺したのか?
羽村の性格的特徴といえば、個人的にはやはり以下3点ではないかと思います。
・他人との衝突を避けようとする
・年上の人間の言葉は疑わず、無思考で従う癖がついている
・相手の求めるようにふるまいがち
上記は日本人あるある、特に昭和のビジネスマンあるあるなのかもしれません。ひと昔前に比べれば”多様性”なるものが徐々に認められるようになってきた昨今と違い、本作の制作時はまさに、立場が上の人間に逆らうなんてとんでもないというイエスマン的な風潮が強かったはず。
そしてドラマのストーリー展開をみていくと、羽村のそんな特性が悪い方向に作用した案件、実は結構多かったんじゃないかと思うのです。
たとえば例の悪徳大学教授の件にしても、またその娘さん(元婚約者)の件にしろ、羽村に”我慢グセ”さえなければ少なくともあれほど酷い結末にならなかったのではと思えてなりません。
黒い感性が当たり前のように渦巻く世界をザ・事なかれ主義をつらぬきながら生きていこうとしていた羽村。しかしその姿勢のままでは、苦しむ繭を救うことなどできなかったはずです。逆説的な言い方になってしまいますが、彼が変わることができたのはやっぱり繭の存在あってこそでしょう。
単純に容姿がカッコいい!とか、あるいは繭を守る姿勢がカッコいい!みたいな方向で語ることももちろん可能なんですが、どちらかといえばこの身の振り方を一瞬で決めた感じ、腹のくくり方の早さみたいな部分が羽村の一番のカッコ良さなんじゃないかなと思うんですね。
明らかに何やら抱えていそうな繭に対し、あれだけ事なかれ、当たらず触らずの姿勢を徹底していた初期を考えると、ストーリーのラストにて空港で繭の父を刺したトンデモ行動にはマジで頭が下がります。
まあ優等生ほどハジけると怖いという言い方もできますが…。しかし一人の人間をあれだけ変貌させた繭は、やはり魔性の女といっていいのかもしれませんね。
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1993年ドラマ『高校教師』ネタバレ考察 ヒロイン・繭は父親と共依存の関係にあったのか?