『薬屋のひとりごと』は、ライトノベル作家・日向夏さんによるファンタジー小説。原作小説(ヒーロー文庫)第11巻では、大蝗害ののち西都を襲う大混乱と西都にとどまり尽力する壬氏、そしてミステリアスな人気キャラ・陸孫の出自などが描かれています。
今回は『薬屋のひとりごと』原作小説11巻(ヒーロー文庫)のネタバレ感想と考察について。
『薬屋のひとりごと』の原作小説11巻(ヒーロー文庫)のあらすじ
戌西州を襲った大蝗害。激しい混乱の中、西都や国境近くでは食糧の強奪や暴動が起きるようになっていた。
これまで一貫して中央からの客人という扱いだった壬氏も、自身の立場を利用し、中央からの支援物資の取り寄せを率先しておこなっていた。が、その手柄はすべて西都の領主代行・玉鶯のものとして扱われてしまう。
猫猫は腹を立てるが、当の壬氏はどこ吹く風。そんな中、猫猫にもさまざまな問題が火の粉となって降りかかり……。
謎の腹痛に苦しむ玉鶯の孫娘。羅漢が連れてきた棋聖と呼ばれる老人。同僚の医官・天祐の奇行。ヒロイン猫猫は、次々と降りかかる難問奇問をぶじ解決できるのか。そして、不審な動きを続ける領主代行・玉鶯の狙いとは……?
『薬屋のひとりごと』の原作小説11巻(ヒーロー文庫)のネタバレ感想と考察
猫猫に求婚した骨太男子・陸孫の出自
『薬屋のひとりごと』原作小説第11巻の主役は、真のメインヒーロー壬氏ではなく陸孫でした。いや圧巻でしたね。
「世の中の人間の大半は自分より下級」的な信念を隠すことなく生きていた玉鶯のもと、ただ人の顔を覚えられるだけが取り柄のザ・優等生を一貫して演じていた陸孫。作中での描かれ方をみるに、これまではなんだかんだ誰に対しても腹の内を明かしたことがなかったのだろうと思われます。
家族の一件に加え、”今の自分が演じるべき役割に徹する”能力は生まれつき高いのでしょう。この点は、実は壬氏と陸孫の最大の共通点ではないでしょうか。
ただ、玉鶯の死とともに彼のすべての思いが報われた…というのはちょっと違うんじゃないかな。こういったリアリティ寄りのファンタジー作品においては、仇を殺ってそれで一件落着…みたいな展開ももちろんアリですが、なんとなく陸孫はそういったキャラではない気がするんですよね。
人を殴るけど殴られたことがない人は、本当の意味で強い人間とはいえません。なぜなら、殴り返された経験がなければ、思い通りに動かない相手に対処することすらできないからです。
玉鶯はまさしく「人を殴るけど殴られたことがない人」だったんだろうなと思います。そして陸孫は、家族の一件以来「殴られつづける」道を自ら選んだ人。
そうした意味では、初めから勝負はついていたような気もしますね。生き方や考え方はちょっと仇を討ったからといって簡単には変えられません。陸孫の人生は玉鶯を討った瞬間にようやく始まったといってもいいでしょう。今後の彼の動きにも注目ですね。
ヒロイン・猫猫は”報われない男”に弱いのでは…?
さて、ラブロマンス面にも一応触れておきましょう。とはいえ今回、ヒロイン猫猫と壬氏の絡みはきわめて少なかったため、語るべき重要エピソードはほぼありません。
ただ、直接の絡みがほとんどなかったわりには、壬氏を心配する猫猫の想いが要所要所できちんと描かれていた印象があります。
この点、猫猫はやはり”報われない男”に弱い節があるんじゃないかな。育ての親である羅門のたどってきた道もあり、やはり他人のために身を削りながら生きている人間に対して人一倍敏感になっているような気がします。
もっとも、西都に残ると決めたのは壬氏への同情というより、完全に彼女自身の意思でしょうね。戦を望んでいた厄介者・玉鶯がいなくなろうがまだまだ西都の混乱は続くのが目に見えていますし、それを見捨てて一人だけ安全地帯へ戻れるような性格ではないはず。
今回、暗躍する雀が有能すぎてヒロイン猫猫がお株をうばわれているきらいはありましたが、まあそれもご愛敬といったところでしょうか笑。
本巻にてあれこれが明らかになった陸孫とちがい、雀についてはまだまだ謎が多いのが事実。その点も今後描かれていくことを期待しつつ、今後もなろう版とあわせて追っていきたいと思います。
▼『薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫) 各巻ネタバレ感想と考察
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