【ある閉ざされた雪の別荘で】は、1992年に講談社ノベルズとして発売された、人気作家・東野圭吾の長編推理小説。
2024年1月、WEST.の重岡大毅さんを主演に迎えた実写映画が公開されることが発表され、原作小説の独特のストーリー展開があらためて注目を集めている。
今回は東野圭吾の原作小説【ある閉ざされた雪の別荘で】のネタバレ感想について。
【ある閉ざされた雪の別荘で】原作のあらすじ
舞台は早春の乗鞍高原。演出家として名の知れた人物・東郷陣平が手掛ける舞台オーディションに合格した役者7名が集められ、いざ舞台稽古が始まるが…。
その稽古というのが少々特殊だった。四日間、ペンションを貸し切って稽古を行うのだが、”大雪によって孤立してしまった山荘”という設定に厳格にしたがいながら遂行する必要がある。
その都度起こった出来事に皆で協力して対処しつつ、各人の動きや対応などをまだ未完成の推理劇の脚本・演出に反映させていくというのだ。
演出家・東郷はその場にはおらず、手紙で間接的に指示を出してくるのみ。そして、電話の使用を含む外部との接触は一切禁止されていた。
規定を破れば、オーディション合格は即刻取り消しに…。
集められた役者陣は戸惑いつつも、指示に従い、言われた通り稽古に打ち込むことに。
「殺人が起こった」という設定指示が出されるたび、殺される役の人間は実際にペンション内から姿を消していく。一人、また一人と仲間が消えていくにつれ、彼らはしだいに恐ろしい疑念を抱いていく。
これは本当に単なるお芝居なのか…?
※以下、ネタバレあり。
【ある閉ざされた雪の別荘で】読了後ネタバレ感想
ミステリーの王道といえる舞台設定
本作の面白さは、タイトル通り「閉ざされた空間」で”殺人っぽい”出来事が次々起こる…という、いわばミステリーの王道とも言える場面設定をしっかり抑えていること。しかし、実際に起こっていることはいわゆる”王道の展開”とは異なっています。
結論から言うと、劇中では実際に殺人事件が起きているわけではありません。
ただ、本文の中に第三者的視点(「神の視点」とよばれるもの)と登場人物の一人・久我和幸の視点が交互に登場するため、読む人にあたかも本当に殺人が起こっているかのように錯覚させることに成功しているのです。
東野圭吾作品らしい”どんでん返し”
殺人は実際には行われていなかった
東野圭吾作品の魅力といえばやはり、登場人物それぞれに寄り添うような繊細な心情描写。そして、そちらに読者を惹きつけておいた上で予想外の結末を突きつける”意外性”です。よく言われる「どんでん返し」というやつですね。
本作【ある閉ざされた雪の別荘で】においても、この「どんでん返し」手法がバッチリ取り入れられています。
ストーリーの序盤で演者(と読者)サイドに「ただの芝居稽古」と思わせた上で、さらに「ん、やっぱり芝居じゃない!?」と疑わせ、そして最終的に辿り着くのは「やっぱりただの芝居だった」というお決まりの結末。
このように事件の構造が何重かの構造になっている物語はわりとありがちなため、東野圭吾ファン、あるいはミステリー小説を読み慣れているある程度カンの良い人であれば、もしかしたら実際に起きていることに途中で気づけたんじゃないかなと思います。
漢字一文字で全てがひっくり返る!?
本作【ある閉ざされた別荘】について、その内容のみならず「漢字一文字で全てがひっくり返る!」という魅せ方が話題になったのも記憶に新しいところ。では、その”漢字一文字”とははたして何なのか…?
結論から言うと、該当する漢字一文字とは「私」。
地の文章、いわゆる神の視点だと読者に思わせていた第三者の視点が、実は「私」という特定の人物のものだった、と。結論を全て知った上であらためて読み返すと、結果的に全ては「芝居だった」というのは嘘ではなかったわけです。
芝居であるということは、必ず観客がいる。では、その観客とははたして誰なのか…?
その鍵は「私」たる人物が握っています。そして「私」がそんなことをした理由とは…。
作品全体をみてみると、結果的に作中では誰一人死んでいない…というミステリー的には少々珍しい展開。そのぶん、登場人物の心理や心情の変化が一つ一つ丁寧に描かれている印象がありました。
東野圭吾作品が好きな人、あるいは「ちょっとひねったミステリー」を好む人にはとてもハマる一作ではないかと思います。
主演はWEST.の重岡大毅
映画版【ある閉ざされた雪の別荘で】のキャスト
2024年冬に公開となる映画版【ある閉ざされた雪の別荘で】のキャストは以下の通り。
キャスト:重岡大毅(久我和幸)
キャスト:中条あやみ(中西貴子)
キャスト:岡山天音(田所義雄)
キャスト:西野七瀬(本村由梨江)
キャスト:堀田真由(笠原温子)
キャスト:戸塚純貴(雨宮恭介)
キャスト:森川葵(麻倉雅美)
キャスト:間宮祥太郎(本多雄一)
主演・久我和幸を演じるのは、アイドルグループWEST.の重岡大毅さん。
久我和幸は「集められた役者陣のうち、一人だけ別の劇団に所属している」青年。また本作において、ミステリーには不可欠な「探偵役」も務めています。
映画【ある閉ざされた雪の別荘で】公開日は2024年1月12日。ぜひ劇場にてご覧ください。