『薬屋のひとりごと』は、ライトノベル作家・日向夏さんによる人気ファンタジー小説。原作小説(ヒーロー文庫)、そしてなろう版のWeb連載でも共通して描かれているのが、壬氏と猫猫の恋愛模様。壬氏はいつから猫猫を好きになったのか? いずれは結婚してラブラブに……? 薬屋ファンの視点から考察してみました。
壬氏はいつから猫猫を好きになったのか?
甘いマスクに甘い声、富も地位も名誉も生まれながらに手にしているスーパーハイスペック腹黒宦官・壬氏(皇弟)。
作中では薬と毒にしか興味のない異色のヒロイン・猫猫にベタ惚れな描写が目立ちますが、いったいいつから、どんなタイミングで好きになったのでしょうか。まずは気になるポイントから考察していきます。
妓女ではない猫猫の身請けに多額の身請け金(金子&冬虫夏草)を積んだ壬氏

まずは「猫猫の身請け」という重要ポイントから。ただし猫猫はそもそも妓女ではないため、正確には「借金の肩代わり」という表現が正しいのでしょう。
しかもこの借金、そのほとんどが李白が白鈴ねーちゃんと遊んだぶんの代金なんじゃないでしょうか。したたかに生き抜いているようにみえる猫猫ですが、こうみるとやはり真正のがめつさキャラなやり手婆にはかなわないのね。。
そしてその借金をあっさり払ってあげた壬氏。まあ彼の立場を考えれば大した金額ではないのだろうと思われます。
ただ、問題は払ってあげた意図なんだよな~。正直この時点で、壬氏のほうは猫猫沼にどっぷり浸かっているようにしかみえません。が、猫猫について、多くの金子を積んだからといってあっさり自分のものになるような女ではないことはハナからわかっていたはず。
とりあえず他の男が手を出せない状況をつくってしまいたかったということなのかな。この行動が猫猫の種馬(※実の父)羅漢の逆鱗にふれるとはまだまだ知らずに。
高順が苦労性だなんだとイジられていますが、正直読者からすれば壬氏もたいがいなんだよなあ。それもまた良さではあるんですけどね。
壬氏が猫猫にプロポーズしたヒーロー7巻

停滞マンネリ状態にある恋愛模様がいきなり動き出すのが『薬屋のひとりごと』のよいところ。原作小説(ヒーロー文庫)7巻では、壬氏の「俺はおまえを妻にする」宣言が唐突にとびだし、壬猫厨全員が歓喜に湧きました。
が、関係性そのものはプロポーズ前も後も特に変わらず……。壬氏も猫猫も立場上、あるいは生い立ちのためなのか、とにかくポーカーフェイスがうますぎる。
何があろうがあるまいが、絶対に感情を顔に出さない&読ませない。もちろん宮廷という特殊な環境下で生き抜くには必要なスキルではありますが、この2人のラブに関しては一番いらん部分なんですよね~。
7巻のストーリー展開には、壬氏と猫猫のラブがいっこうに進展しない理由がひそかに凝縮されている気がしてとても読み応えがありました。
【薬屋のひとりごと】原作小説7巻(ヒーロー文庫) ネタバレ感想と考察 | 壬氏のプロポーズに猫猫は?
ヒーロー14巻の壬氏「ぎゅっとするだけでおさまらず、噛むし舐めるぞ」
壬氏「ぎゅっとするだけでおさまらず、噛むし舐めるぞ」
猫猫 「今、ぞわっときました」
ヒーロー文庫14巻の上記のやり取り、個人的にはめちゃくちゃ好きでした。なんというのか、とりあえず現時点の壬猫の関係性がそのまま表現されている気がします。
おそらく壬氏に思いを寄せる前の猫猫であれば、こうは言わなかっただろうと思うんですよね。「ご冗談を」とか「めっそうもない」とか、そういう無難な台詞でさらっと流していたんじゃないかなと思います。
「ぞわっときました」は猫猫の素直な等身大の気持ちで、でもそれを立場も権力もすべてがトップクラスの男にそのままぶつけるのにどれだけリスクがあるか、猫猫にはわかりすぎるくらいわかっているはず。
でもこの時点の猫猫の態度には、もはや壬氏に対する遠慮とか体裁とか、そういうものがほとんどありません。
もちろん内心にはあったとしても、少なくとも2人きりの対話の中では気張らなくていいとちゃんとわかっている感じがする。これが猫猫のいう「安堵感」というやつなんじゃないでしょうか。
壬氏が猫猫を好きになった理由は?

最終的に壬氏が猫猫を好きになった理由は……というと、やはりはっきりと言語化するのはすごくむずかしいですね。
「皇弟ではない、ありのままの自分でいられるから」というのがわかりやすい理由ではないかと思いますが、少なくとも作中ではそういった描写は一度もありません。
しかし、壬氏のそばでは自然体でいられる、というのは猫猫も同じなんですよね。
登場時は名前の通り野生の猫みたいだった猫猫が、いまやそれだけほだされている姿をみるのが初期からの読者としてはとても嬉しい。このままうまくくっついてくれたらなあと思うこの頃です。
【小説】壬猫夫婦設定 妄想注意
※以下pixiv再褐。二次の概念がわかる方のみお読みください。
■病めるときも■
それは、ひどく寒い雪の日だった。
ここ数年のうちでもいちばんの寒さだったと、あとで皆が言っていた。
猫猫が、自分から夫に『甘えてみよう』などと、柄にもない行動に出る気になったのは、たぶん、そのせいだったのだろう。
降り積る雪に、すべての音が吸いつくされてゆくような夜だった。
昼間に宮の中庭でみた大きな吹き溜まりをぼんやり思い出しながら、猫猫は寝台に顔を埋めて、窓の外を眺めていた。
壬氏はすぐとなりに腰かけて、これまたぼんやりと、何かの書類に目を落としていた。
伽は、昨晩も、その前の晩も、していない。
当然だ。
血の障りの時期に入ったと、あらかじめ伝えてある。
そういえば、夫婦になってまだ間もない頃であっただろうか。
壬氏と口論になったことがあった。
血の障りの時期は、寝所を別にさせて欲しいと、猫猫のほうから言ったのだ。
貴人の寝台を万一、汚すようなことがあってはならないし、そもそも、壬氏ほどの立場の人間ならば、複数の妃を持つほうが自然なのだ。
そのなかから、その夜の相手を選び、閨を共にする。
つまり、ともに眠る、という行為に、伽以外の目的が付随することなど無いのだ。
それならば、伽をしない夜は別々に眠ったほうが、寝台をひろびろと使えて、より深く眠れるのではないか。
普段の調子でそう主張すると、壬氏はしばらく黙っていたが、やがて猫猫にまっすぐ目を据えて、おどろくほど静かな口調で、こう言った。
俺はなにも、そんなことだけのために、お前を娶ったわけじゃない。
俺はまったく気にならないが、お前が気になるようなら、その時期は普段の倍の敷布を敷いておけば良いだろう。
生涯、お前以外の妻を迎える気はないと言ったはずだ。
お前が嫌なら、その時期はお前の身体には指一本触れないと約束する。
今更、寝所を別になどしないからな。
表情こそ拗ねた子供のようだったものの、いつになく断固とした口調にゆるぎない意思を感じて、まあこの人がそういうならしかたない、と諦めた。
***
あれからもう、何年が経っただろうか。
読みものを続けている夫の、整いすぎた横顔が、寝所の小灯の光の中に浮かび上がっている。
寝台に横たわったまま、猫猫はそれを見るともなしにぼんやりと見ていた。
あのときの言葉を、壬氏はかたくなに守りつづけている。
血の障りの時期になると、抱擁も、口づけすらもしない。
必要以上に近づかないように気を遣い、慎重にとなりに横たわる。
そういえば、その時期になると、壬氏はいつもすぐには横にならず、遅くまで何かを読んだり書いたり、とにかく遅くまで寝所の隅で何やらやっている気がする。
血の障りの時期になると猫猫の眠りが普段より浅く、ひどく寝付きが悪いことを、知っているのだろうか。
絶対に、猫猫より先に眠りにつくことはしない。
普段から過労気味なのだから、こちらのことなど気にせずさっさと寝れば良いのに。無駄な気遣いにもほどがある。
もっと若いときの猫猫なら、内心でそんなふうに毒づいていたはずだ。
だが今は、そんなふうには思えない。
ただ、ほんとうに困ったひとだと、内心でため息を吐くだけだ。
壬氏の行動一つひとつが、猫猫のためのやせ我慢などではなく、本心から、好き好んでしていることなのだと、解ってしまったから。
壬氏が、あのときの猫猫の言葉をどう解釈したのかはしらないが、猫猫としては別だん、血の障りの時期に身体に触れられるのを嫌だと主張したつもりはなかった。
ただ、いち妃として、そして貴人の妻として、慣例に則った規範通りの行動を取ろうと思っただけなのだ。
世の女のうちには、その時期になると気がたってしまい、夫や恋人とさえ、顔を合わせるのも嫌になってしまう人間もいるのは知っているが、少なくとも猫猫自身には、それほどひどい症状はない。
普段より多少身体がおもだるく物憂げになる、そしてやたら眠いわりには眠りが浅い、めぼしい症状はせいぜいその程度だ。
だからなのか……ときおり、柄にもなく心細くなって、むしろ、指先や片手だけでもいいから触れてほしいと思うことすら、ある。
特に、こんな、寒い夜には。
もちろん、そんな本音を素直に伝える術など、猫猫は持たない。
今更、そんな甘えたことを言えるはずもないのである。
たとえ夫婦だろうが、何年連れ添っていようが、些細なすれ違いくらい、いくらでもある。
それらを一つひとつ正すことなど、それこそ仙人の力でも借りなければ、到底できないものだろう。
これまでは、壬氏とのあいだに何か齟齬が生じるたびに、そんなふうに思って諦めてきた。
だが、今、小灯に照らし出された夫の端正な顔をぼんやり見ているうちに、それは諦めというより、むしろ恐れだったのではないかという思いが、唐突に、胸のうちにきざしてきた。
たぶん、自分はおそれていたのだ。
それなら、いったい、何を。
別に、かまわないではないか。
何だというのだろう。
この特殊趣味の男に、今更、どう思われようと。
もし不敬を問われるようなことがあるなら、そのときは、毒殺を頼めばいい。
それくらいのわがままを聞き入れてくれないような人ではないことくらい、これまでの付き合いのなかで、ちゃんとわかっている。
何の意図も、他意もなかった。
猫猫はただ、壬氏に触れたかった。
言葉も、優しさも、何も無くてもいい。
ただ温もりを、感じたかった。
自分でもかすかにおどろくほどの真剣さ、熱心さで。
母を求める幼子のような執心。
いつから、こんな甘ったれた人間になってしまったのだろう。
***
ぼんやり見つめる猫猫の視線に気づいたのか、壬氏がふと、目線を上げてこちらを見た。
「なんだ、どうした。まだ起きていたのか?」
「……」
猫猫は答えなかった。
「……おい、なんだ? まさか、具合が悪くて眠れないのか?」
手にしていた書物を置き、怪訝そうに眉をひそめて近づいてきた男の袖口を、猫猫は、そっとつかんだ。
「……?」
おどろいたように目を見ひらいた男の顔から目を逸らしながら、呟くように、言った。
「……寒いので、眠れません。あたためていただけませんか」
「……」
沈黙が満ちた。
つかんでいた袖をそっと離して、おそるおそる目線だけ上げた。
目と目が、合った。
夫は、いままでに見たことのない顔をしていた。
呆気にとられたような、嬉しそうでもあり、それでいて歯がゆいような、どこか、怒ってさえいるような……
妙な表情を浮かべたまま、壬氏はふいに、着ていた羽織を脱いだ。
身をかがめて、綿の入った分厚いそれを、寝台に横たわったままの猫猫の身体に、ぐるぐると巻き付ける。
そのまま、自分も横たわって、巻き付けた羽織ごと、猫猫を抱え込んだ。
大きな手のひらが猫猫の頭を持ち上げ、広い胸元に押しつける。
あっというまに、白檀の香りと、慣れ親しんだ体温につつまれていた。
「……そうならそうと、もっと早く言え」
呆れたように言いながら、壬氏はまるで猫の子でも扱うような手つきで、猫猫の髪を撫で、背を撫でた。
「珍しいな。お前が、そんなことを言うとは」
雪でも降るんじゃないのか。いや、もう一日中降っているか。
揶揄うように軽口を叩きながらも、大きな手のひらは、猫猫の身体を撫でさするように、繰り返し撫でている。
その仕草に、ふいに、奇妙な懐かしさを覚えた。
一瞬のちに、ずっと昔、羅門が同じように幼い猫猫を寝かしつけてくれていたことを、思い出した。
ああ……そうか。
自分はいま、甘やかされているのだ。
急に気恥ずかしさを覚えながらも、もはや馴染みすぎた体温にあっというまに絆されて、ほんとうに幼い子どもに戻ったように素直に、猫猫は眠りに落ちた。
***
「坊ちゃま、小猫……お部屋は寒くないかしら? 生姜湯をお持ちしました……あら?」
扉の影で小灯の光がゆらめいているのが見えたので、てっきりまだ起きているものと思ったのだが。
呼びかけに対する返事はない。
二人分の生姜湯を乗せた盆をかかえて、水連は首を傾げた。
猫猫が血の障りに入っていると聞いているので、まさか伽の最中ということはないだろう。
そっと中をうかがうと、寝台の上で寄り添うように眠る、ふたりの影が見えた。
「まあ……灯りをつけっぱなしにして」
足音をしのばせてそっと寝所に入り、灯りを消そうとして、水連はふと、抱き合うようにして眠っている皇弟夫妻の表情に、見とれた。
これまでずっと、壬氏の傍で世話をしてきたのだ。
幼いころも、それなりに大きくなってからさえ、彼の寝顔なら、何度も見てきている。
それでも……壬氏がこれほど穏やかな顔で眠っているところを見るのは、初めてだった。
彼が大事そうに両腕で抱きしめている小柄な娘のほうも、これまた普段の様子からは信じがたいほど穏やかな顔つきで、静かな寝息をたてて眠っている。
(小猫……坊ちゃまのとなりでなら、あなたはそんな顔も出来るのね)
猫猫本人に、その自覚があるのかどうかは知らない。
だが少なくとも、猫猫が壬氏の妃となったばかりの頃は、彼女がこれほど満ち足りた表情を浮かべるところを、水連は見たことがなかった。
なんだかんだで、生真面目な娘のことだ。
妃として、貴人の妻として、不足が無いように、粗相のないように、常に気をはって、周囲に気を遣っていたのだろう。
(ようやく、坊ちゃまに対して、素直に甘えることができるようになった……というところかしら)
もしかしたら、このふたりの『恋愛』は、夫婦となって数年が経つ今、ようやく幕を開けたところなのかもしれない。
だとすれば、それは、身分差ゆえのものか、それとも……双方の不器用さゆえなのか。
どちらでも良い。
愛情のかたちも、幸福のかたちも、きっと、この世に生きるひとの数だけある。
他人がどうこう言う筋合いなど、ないだろう。
自分はただ、まだ若いふたりを見守っていけばいい。
灯りを静かに消し、いったん背を向けてから、水連はもう一度振り向いた。
窓覆いの布の隙間から、ぼんやりと淡く明るい雪明りが差している。
その光に照らされたふたりの顔は、やはり、ついずっと見ていたくなってしまうほどに、幸せそうだった。
……ごゆっくり、おやすみなさいませ。
心の中でそっと呟いてから、水連は今度こそ、静かな寝所をあとにした。
■妃の長湯■
湯殿のなかで、唐突に男の香りを思い出した。
品の良い白檀とはまた違う。その奥にひそかににじむ、男自身の香りだ。しっとりと水気をふくむ、冷たい髪の感触も。対照的にあたたかい腕のつよさも。太い指先や湿った舌先の、執拗な動きも。
思い出したら、動けなくなった。
*
普段ならば、これほど湯殿に長居することはない。これでも下女などしていた身だ、妃が長湯などすればするだけ、掃除をする下女の帰りが遅くなってしまうことをしっている。
もとは下賤の身である。高貴な人間につかえる者の気苦労くらい、よくわかっているつもりだ。
まだ年わかい宮仕えの女たちに、あまり迷惑がかかることはしたくない。ないのだけれど。
熱い湯に身体をふかくしずめたまま、猫猫はそろりと片手を湯から出した。目の前にかざしてじっと見つめる。指の先はすでに、ふやふやにふやけている。
壬氏は、気づいているだろうか。
夫が長期の遠征から戻るたびごとに、猫猫が柄にもなくこんなに長湯して、時間をかせいでいる、そのわけを。
きっと、とうの昔に気づいているのだろう。もちまえの執着と粘着さで。なんせ夫婦になってもう十年とそこそこである。顔をひと目見れば、互いの機嫌やら体調やらは、手にとるようにわかってしまう。
くやしいような気恥ずかしいような思いがこみあげる。全身をつつむ湯の熱に、思考があとかたもなく溶けていく。
くらくらしてきた。さすがに立ち上がろうと思ったが、身体に力が入らない。そうか、湯あたりとはこういう症状をいうのか。長湯をたのしめるような優雅な育ちをしていないので、経験するのは初めてだ。三十路に入って、若いころよりは三半規管が弱っているのだろう。
立ち上がるのをあきらめて、真っ赤に火照った頬を、湯舟のふちにぺたりとつけた。疲労と眠気がこみあげる。目をとじる。眩暈がした。くらくらする感覚は、お気に入りの毒を呑んだときの感じにどこか似ている。
けだるくて、心地がよかった。
*
暗い部屋にすこしずつ細い光を入れて明るくするように、ぼんやりと意識が戻ってきた。気を失っていたというのに、不安感は微塵もなかった。目を開けるまえから、傍に誰が居るのか知っていたからかもしれない。
重い瞼をゆっくり上げる。見慣れた天蓋が視界にとびこんできた。身体の熱はすっかりひいている。全身がかわいた布で包まれているのがわかった。
はたはたと、程よい風を頬に感じる。目をやると、天仙の美貌がかすかに眉をひそめて、こちらをのぞきこんでいた。
「……だいじょうぶか?」
幼子に問うような声色だ。無理もない。さすがにこんなことは始めてなのだから。
「……瑞月さまが運んでくださったのですか? 長期の視察からお戻りになったばかりなのに、お手をわずらわせて申し訳ありませんでした」
「それは別にいいが」
眉を寄せたまま、夫は横たわったままの猫猫にずいと顔を近づけた。
「……おまえ、もうこういうのはやめておけ。湯殿で妃がひとりのびているなど、洒落にもならん。万一発見が遅れたら、どうするつもりだ」
「……」
「おい。おい、聞いているのか?」
尋問のような口調だが、手にした小さな扇で律儀に、猫猫に風を送りつづけている。心配半分、呆れ半分といったところだろうか。
それはそうだろう。すでに子もいる妙齢の女が、湯殿に無為に長居したあげくに湯あたりしてのびていたら、誰だって呆れもする。
唇がおりてくる。ゆっくり触れる感覚がなつかしかった。
唇がはなれる。どこか揶揄うような、それでいて愛おしむような視線を、猫猫は身をよじるようにして避ける。粘着質な男から逃げるなんてできやしないと、もう、肌で知り抜いているのに。
「……そういうところも、好きだけどな」
だが、身体にはちゃんと気を付けろ。もっと自分を大事にしろ。
薬師に言うことじゃありませんよ。
今のおまえは、幼い子どもと何ら変わらんだろうが。
言い合いが、馴れ合いのような言葉の応酬に変わる。互いの熱に触れる。しばし味わっていなかった毒に触れた気になる。
あたたかかった。
*
腕のなかでくうくう寝息をたてている妻をみながら、薄暗い閨の闇のなか、壬氏はひとり声をころしてわらった。
いじらしい女だと思う。天仙の美貌にも、甘露の囁きにもまるでなびかないくせに、初夜の床ですらほとんど平然としていたくせに、しばらく会っていなかった夫に久方ぶりに抱かれるというだけのことに、生娘さながらの照れをみせる。
蟒蛇のくせして、酒の力など借りたがる。長湯して時間をかせごうとする。そんな奇妙にねじれた初心さが愛おしい。あまりに遅いと行ってみれば、ひとり真っ赤な顔でのびていた姿には、さすがに肝を冷やしたが。
華奢な身体を抱きなおす。なつかしい、この腕にもはや馴染んだ手触りである。
猫猫の静かな寝息が耳にやさしかった。
(……ああ、帰ってきたのだな)
ふかぶかと実感しながら、壬氏は目を閉じた。
▼『薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫) 各巻ネタバレ感想と考察
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【薬屋のひとりごと】壬氏と猫猫は結ばれる?皇帝&妃になる可能性は?【ネタバレ考察・感想】
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