エレファントカシマシの楽曲の多くは、当バンドのVo.Gt.宮本浩次が作詞作曲を担当している。が、宮本浩次以外のエレカシメンバーが作詞作曲を担当した楽曲が1曲だけある。
今回は、エレカシのドラム担当・トミこと冨永義之さん作詞作曲の楽曲『土手』の概要や歌詞について。
エレファントカシマシ『土手』概要
『土手』は、エレカシの2枚目のアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI II』収録曲。作詞作曲は冨永義之。エレファントカシマシの楽曲のうち、作詞作曲に宮本浩次のクレジットがないのはこの曲のみ。
エレカシのドラム担当トミはどんな人?
エレファントカシマシのドラム担当トミこと冨永義之さんは、もともとは宮本氏と石くん(Gt.石森さん)と中学の頃の同級生で、三人でともにエレファントカシマシを立ち上げた。
頼りがいのある性格で、エレカシメンバーやファンからは”兄貴分”と称されている。また学生時代はぶっちぎりの「モテ男」だったとメンバーが語っている(過去トーク番組などにて)。
エレファントカシマシ『土手』はどんな曲?
『土手』は比較的ゆったりした曲調の楽曲。そこに宮本浩次の太い高音が加わることで、のびやかで広がりのある自由な世界観が感じられる。エレファントカシマシに特有のどこか内省的な、それでいて明るく語りかけるような独特の雰囲気がぴったりとハマった一曲だ。
ああ めまぐるしい朝がくる
エレファントカシマシ『土手』より
向うの空がかすむころ風の音も消えて
また真っ白からはじまる
また真っ白からはじまる
『土手』の歌詞には、どことなく捉えどころのない不思議な空気感がある。曲タイトルは「土手」だが、土手というワードは曲の序盤に一度出てくるきりで、それ以上の情景や感情に関する詳細な描写もほとんどない。
そして楽曲のなかでくり返されるフレーズ<また真っ白からはじまる>。このフレーズには具体性はまるでないのに、聴く人にはなぜか歌の主人公たる人物の心情が伝わってくる。
「また真っ白からはじめる」ということはいろいろあったがうまくいかず、またイチからやり直していこうという前向きな意味合いなのか、あるいはすべてを無にしてしまおうと自棄になっているのか。
楽曲の中に無駄な描写や状況説明がほとんどない。だからこそ、聴く人は無意識に頭のなかで、その人の思う世界観を作り上げようとする。土手のそばで笑って眠り、また真っ白からはじめようとしている人の人物像をリスナー一人一人が創造する。
解釈は人それぞれ。
この自由度の高さが、まるで純文学のような楽曲だと思う。
備考:エレカシ『土手』は真心ブラザーズの『荒川土手』に似ている?
これは余談だけれど、エレファントカシマシ『土手』は真心ブラザーズの『荒川土手』という楽曲に似ていると感じる人がかなり多いようだ。
エレファントカシマシの『土手』 真心ブラザーズの『荒川土手』 どちらも良い曲で大好き。 北区出身ならではなのか、やはり荒川・土手の歌がしっくりくる。 歌詞に出てくる色で、エレカシが『まっ白』で、真心が『まっかっか』なのもまた面白い!
https://twitter.com/jerezjerezek/status/1527296022896328704
エレカシ「土手」 1988年11月21日 真心ブラザーズ「荒川土手」は 1990年11月21日 エレファントカシマシへの オマージュかなぁ
https://twitter.com/miyanabu_kyan/status/1684207479113101312
おぉ!早速 確かにがなって歌ってるし、ラ行が若干巻舌ですよね。倉持さんは宮本さんの1学年下でデビューも1年後で出身は確か王子だったはず。2人に親交は無さそうですが、『荒川土手』聴くと、エレカシと同じ時代の空気吸って近い原風景見て育ったのかなぁと思います。
https://twitter.com/neokatoZ/status/1680749068094681089
曲を聴いてみると、あくまで「土手」というワードが共通しているだけで、楽曲の雰囲気そのものがすごく似ているというわけではないと思う。
ただ、そもそも荒川の土手は、エレファントカシマシの撮影場所として多々登場する。
例えばアルバム『RAINBOW』のジャケ写や、代表曲『今宵の月のように』のPVの一部は荒川土手にて撮影されたものだ。そのため、真心ブラザーズの『荒川土手』に親近感を覚えているファンも多いのかもしれない。
『荒川土手』の歌詞をみてみると、雰囲気がどことなくエレカシのそれに近い気もする。疲れ切った人にそっと寄り添ってくれるようなやさしい雰囲気がある。
原因不明のゆううつがくるまえに 荒川土手にて心をゆるめよう
真心ブラザーズ『荒川土手』より
ああ、いいなあ。なんかいいなあ。歌詞がやさしくて心がじんわり緩むのがわかる。
エレカシ『土手』を聴いたら、その流れで真心ブラザーズの『荒川土手』を聴いてみるのもマニアックな楽しみ方の一つかもしれない。