エレファントカシマシ『あなたへ』歌詞の意味を考察 「あなたが今より嘘つきでなかったら」

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エレファントカシマシ

日本を代表する4人組ロックバンド「エレファントカシマシ」(通称エレカシ)。1981年結成、1986年にデビューし幅広い表現活動を続けている当バンドは今年2023年3月、無事35周年を迎えました。本記事ではそんなエレカシの名曲「あなたへ」の歌詞について、いちファンとして考察を書いています。

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エレファントカシマシ「あなたへ」概要

「あなたへ」は、エレファントカシマシの45枚目のシングル作品。作詞作曲は宮本浩次。Vo.宮本浩次の病気療養によるライブ活動休止以来、約1年ぶりのリリースとなった。

宮本氏いわく、歌詞の「あなた」は母親を示しているという。ただ、歌詞の中に「母」をあらわす言葉は一切入っていない。しかし「あなた」へ対し直接語りかけるように綴られた歌詞をみれば、.宮本氏の母親に対する深い感謝や愛情、思慕の念をうかがい知ることができるだろう。

すべてあなたへ ぜんぶぜんぶ わたしの生命は繋がっているのです

エレファントカシマシ「あなたへ」歌詞考察

音楽に限らず映画や小説などあらゆる芸術作品において、テーマが「母親と息子の絆」であるならば、その内容はどことなく私的な、こじんまりした世界観に落ちつく傾向があるのではないだろうか。

一つ具体例を挙げると、たとえば個人的に大好きな邦画「東京タワー ~オカンと僕と、時々、オトン~」は、樹木希林さん演じる「オカン」が、オダギリジョーさん演じる「ボク」を女手一つで立派に育てあげる過程を描いたハートフルなストーリーだ。

この映画の良さは、オカンとボクの関係性や出来事の具体性が高いこと、すなわちその母子だけに起きた出来事やそれに伴う感情表現がとことん繊細だったからという理由に尽きるのではないかと思うのである。

それにひきかえ、エレファントカシマシの「あなたへ」の歌詞表現は非常に抽象的と言える。歌詞の中では「運命」「大いなる星」「開けた大地」「生命」といったスケール感のあるワードがひたすらくり返されており、一見、母親への愛情というよりは生命賛歌のような荘厳な雰囲気さえたたえている。

そして、その中でも個人的に気になった歌詞があった。

もしもあなたが今より嘘つきでなかったら わたしはこの開けてる大地の限り 遠く説く去ってしまうでしょう(歌詞引用)

『あなたが今より嘘つきでなかったら』

あなたが今より嘘つきでなかったら」この箇所はどういった意味合いをもつのだろう。

いまや有名な話だが、宮本氏は幼少時、NHKの東京児童合唱団に所属していた。
そして、自分が合唱団に入ることになったのは、母親が「この子は歌が好きなんだ」といち早く見抜いてくれたからということ、またデビュー後に試行錯誤を重ね悩んでいた時代も「あなたは大器晩成型だから」と母親が励ましてくれたのだということを、過去のインタビューや対談等の場でくり返し語っている。

それをふまえて考えると、やはり「あなたが嘘つきである」という意味合いを秘めたこの歌詞が少々気になってしまう。言葉通りに捉えるなら、あなた(母)はわたし(宮本)に嘘をついていた。つまり、自身の才能をいち早く認めてくれていたという母親の言葉には少なからず嘘が含まれていた、ということになる。

では、この「嘘」とはどのような類のものを指すのだろうか。世の中には絶対についてはいけない嘘もあれば、相手を守り励ますための優しい嘘もある。この場合はもちろん後者であると考えられる。

過去インタビューによると、末っ子である宮本氏は両親と年の離れたお兄さんからとても可愛がられて育った、と語っている。親しい人たちに褒められ、認められて育つのは人格形成においてとても大切なことだ。そして、時には褒める言葉に「嘘」を交えることも必要となるだろう。

優しい嘘をつくことは、相手を守ることにそのまま直結する。守られて育ち、才能を認められ一流のロックミュージシャンとなった宮本氏は、母親だけでなく苦楽をともにしてきたバンドメンバーを含む”守ってくれた人たち”に恩を返すため、この曲を作ったのかもしれない。

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