山本文緒のエッセイ【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記】あらすじと感想

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読書

【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】は、作家・山本文緒さんのエッセイ本。
「これを書くことをお別れの挨拶とさせて下さい」。
58歳で余命宣告を受けた著者が読者に遺した最後の作品です。

今回は山本文緒さんの【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】のあらすじと感想について。

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山本文緒【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記】あらすじ・概要

【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記】は、作家の山本文緒さんが突然がんと診断され、余命を告げられてからの日々をありのままに綴ったエッセイ本。
余命宣告を受け、そしてコロナ禍に入り、夫と二人きりで自宅で過ごした闘病生活。

本書では、診断を受けてから、亡くなる9日前までの日々が事細かに綴られている。
【無人島のふたり】というタイトルの通り、急に大波のなかに放り出され、無人島に流れ着いてしまったかのような不安定な感情、そしてそれを片っ端から打ち消していく著者の強い心が、行間の一つ一つに滲んでいる。
病と闘いながらも書くことを決して諦めなかった著者が読者に最期に贈る、まるで宝物のような一冊。

【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】読書感想文

本書には、余命を宣告されてからの日々がありのまま綴られている。

次に出す予定だった新刊の出版に向けて準備を急いだこと。もう執筆のために資料を読み込むことはしなくていいのだと思い、家にあった大量の未読本を手放したこと。次に書こうと思っていた新作の構想を諦めたこと。

何に注力し、何をあきらめ、何を手放すのか。
それらを自分の中できちんと決め、混乱と絶望にのまれることなく果敢に行動をし続けた山本文緒さんは、きっと最期の瞬間まで「作家」であり続けたのだと思う。

作家というのは物語を書く人のことだ。真っ白な原稿用紙の上に言葉を並べて、誰かの人生をありとあらゆる手法で描き出していく。
フィクションであれノンフィクションであれ、誰かの生き様や心を暴き出すという意味では同じだ。
そういう意味では、この【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】は、作家・山本文緒さんが最期に描き出した渾身のノンフィクション小説と言えるのではないだろうか。

【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】は、単なる闘病記ではなく、一人の人の心を精彩に描き出した読み物として成立している。
「うまく死ねますように」「私、うまく死ねそうです」。
人生の終わりが目の前に見えている状態で、自分のためでなく、あくまで”読者を楽しませる”目的の読み物を書ける人はどれだけいるだろうか。

作家・山本文緒さんは最期まで「作家」であり、一人の「エンターテイナー」だった。
直木賞受賞作【プラナリア】からずっと追ってきたファンの一人として、そのことが心から嬉しい。

読む人に生きる力を与えるパワーを秘めた一冊【無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ】、出会えて本当に良かったです。

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